高速移動時の大容量通信を可能にする分散MIMOの実証実験に成功:自動運転技術
NTT、NTTドコモ、NECは、40GHz帯分散MIMOにおいて、トラックなどの高速移動体に遮蔽される場合や無線端末自身が高速移動する状況でも通信品質の低下を抑える実証実験に成功した。
NTT、NTTドコモ(ドコモ)、NECは2025年3月25日、40GHz帯分散MIMOにおける高速移動時の通信品質の低下を抑える実証実験に成功したと発表した。
NTTとドコモは、複数の分散アンテナで同じビーム識別信号を使って、分散アンテナとビームのベストな組み合わせを同一時間、同一周波数で高速に検知できるビームサーチ技術を開発した。
停車中の無線端末と分散アンテナの間を、時速約50kmで走る車両が遮るケースでは、従来の全組み合わせ検索によって最適な組み合わせを検出するのにかかる時間が1分散アンテナ数に比例して増加した。今回の実験環境では4倍の時間を要した。その結果、通信品質が悪化していた。
同技術により、1分散アンテナ相当の時間で組み合わせの検出ができるようになり、通信品質の低下を抑えられることを示した。
NECは、高速移動によるドップラー周波数や伝搬遅延の変化を無線端末に感知させない通信技術を開発。基地局側の分散アンテナ間で調整して無線端末が受け取る周波数やタイミングをあらかじめ補正する。NECは、アンテナ切り替え時のスループットの低下を抑えることで、無線端末が時速100kmで走行した場合でも、高い安定性で大容量通信が可能であることを実証した。
「5G Evolution & 6G」(「5Gの高度化」および「次世代通信の6G」)時代には、無線通信のさらなる高速化、大容量化が求められる。ミリ波帯を活用し、さらに高い周波数帯による移動通信での利用が検討されている。高周波数帯の電波は直進性が高いため遮蔽対策が重要となる。その対策の1つとして、高周波数帯分散MIMOシステムは有用な手法である。このシステムであれば、多くのアンテナを1つの基地局から分散設置し、各無線端末に対して複数の分散アンテナから無線伝送を行える。
NTT、ドコモ、NECは、「高周波数帯分散MIMO技術の実証実験協力」(2022年6月発表)をベースとして、端末移動予測によるアンテナ選択技術の実証実験を実施し、屋内遮蔽状況下での安定性のある大容量無線伝送に成功した。加えて、複数の無線端末が同時に同一周波数チャネルで無線伝送するケースに、各分散アンテナで構成されるアナログビームフォーミングの干渉抑制効果を最大限利用するマルチユーザー伝送技術の実証実験を実施。歩行速度での移動時も静止状態と変わらない無線伝送容量を可能とした。
今後は、高周波数帯による無線通信の大容量化を活用するユースケースの候補として、自動車や列車など高速移動のケースが考えられる。高速移動体では、周囲で高速移動する車両や、車両自身の高速走行による影響で、通信環境に激しい変化が起こることがある。このような事態に対応するため、通信品質が良好なアンテナとビームを迅速に選ぶ必要がある。しかし分散アンテナ数が増えると選択肢が多くなり過ぎる。分散アンテナを高速移動中に切り替えた場合では、ドップラー周波数や伝搬遅延が急激に変化するため、通信品質の劣化を招く。
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