Arduinoを使って商用電源の周波数を計測してみる:電力ブラックアウトを予測する(3)(2/2 ページ)
商用の系統電力において発送電システムが崩壊し停電を引き起こす「ブラックアウト」。本連載では、製作費数円程度の自作プローブを使ってブラックアウトを予測するシステムの構築を試みる。第3回は、第2回で製作したACプローブをArduinoに接続して商用電源の周波数を計測してみる。
周波数データの記録
Arduinoが計測した約1分ごとの周波数の値はPCに記録されます。これをグラフ化するまでの手順を説明します。
図3はArduinoから受け取った周波数データをグラフ化するまでのプロセスを示しています。
Arduinoは、PCから仮想シリアルポートとして見えています。PCはそのポートを通じてArduinoが計測した周波数データを受信します。そのために用いるのがターミナルソフトです。ターミナルソフトはシリアルポートを通じて他のデバイスと通信するためのものです。今回はTera Termを用いました。
図4は筆者が用いたTera Termのバージョンおよび入手先を示すものです。
Tera Termでは、相手方と通信するために各種設定を行うのですが、通信速度が9600bpsのままであればほぼデフォルトのままでArduinoからデータを受信できるはずです。
そして受信したデータを保存するのにTera Termのログ機能を用います。その際、ログを保存するファイル名の拡張子を.csvとします。
周波数の変化を見てみる
それでは、Tera Termで保存したCSVファイルを表計算ソフトでグラフ化してみましょう。
図5は、Tera Termが出力したCSVファイルをグラフ化したものです。
このグラフは、周波数が60Hzの管内某所で、とある日の明け方5時51分〜翌朝の4時15分までの1345分間、時間に直して22時間と25分間の周波数の変化をグラフ化したものです。縦が周波数というか正確に言えばAC電源のパルスを3600回数える間の時間をμsで表したものです。ですから、周波数に読み直すと上2桁がHzの整数部分でそれ以下が少数部分となります。
横軸は時間で、単位は分となります。
上限が60.1Hzをちょっと超えたあたり、下限が59.85Hzの手前あたりです。表計算ソフトで平均を計算してみると60003961.76ですからこの日は電力事情的には概ね平和な一日だったのではないでしょうか。
おわりに
その昔、クオーツ時計(水晶発振器を基準クロックとした時計)がまだ一般的でなかった頃の電気時計は、このAC100Vの周波数を基準クロックとしていました。1分単位もしくは1時間単位で商用電力の周波数が一定になるように調整されているとも聞いたことがあります。これはいわゆる平常時のオペレーションであって、電力事情の非常時においてはこの限りではないと思います。
何が言いたいかというと、今回は3600回のパルスをカウントしてその時間を計測しました。約1分ですね。計測の分解能がこれで正解なのかはさらなる実験が必要だと思っています。例えば、ブラックアウトになる寸前の1分以内に周波数が急変することもあり得るでしょうし、その瞬間を捉えようと思えば計測間隔はもっと短くすべきでしょう。ただし、計測時間を短くすると周波数の精度に響いてきますから、そのあたりのトレードオフは用途によって検討する必要があるでしょうね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ≫連載「電力ブラックアウトを予測する」バックナンバー
- ≫連載「今岡通博の俺流!組み込み用語解説」バックナンバー
- ≫連載「注目デバイスで組み込み開発をアップグレード」バックナンバー
フォトカプラを使って商用電源の周波数を捉えるプローブを作製する
商用の系統電力において発送電システムが崩壊し停電を引き起こす「ブラックアウト」。本連載では、製作費数円程度(電気プラグを除く)の自作プローブを使ってブラックアウトを予測するシステムの構築を試みる。第2回は、フォトカプラを使って商用電源の周波数を捉えるプローブを作製する。商用電源の周波数の変化から「ブラックアウト」を予測できるか
商用の系統電力において発送電システムが崩壊し停電を引き起こす「ブラックアウト」。本連載では、製作費数円程度の自作プローブを使ってブラックアウトを予測するシステムの構築を試みる。第1回は、ブラックアウトと関わりの深い、商用電源の周波数変化がなぜ起こるのかを解説する。ロシア製ガイガーミューラー管の実力はいかに
注目デバイスの活用で組み込み開発の幅を広げることが狙いの本連載。前回から自作ガイガーカウンターのつぶやきbot「imaocande」をよみがえらせる取り組みをスタートさせたが、今回は新たに作製する「imaocande2」に使用する予定の新たに入手したガイガーミュラー管の特性と動作原理について深掘りする。