日本の酒造りをもっと自由に 若き醸造家が「クラフトサケ」で呼び覚ます文化:新製品開発に挑むモノづくり企業たち(8)(2/3 ページ)
本連載では、応援購入サービス(購入型クラウドファンディングサービス)「Makuake」で注目を集めるプロジェクトを取り上げ、新製品の企画から開発、販売に必要なエッセンスをお伝えする。第8回では、「酒づくりをもっと自由に」という思いのもと、「クラフトサケ」という新たなジャンルの酒づくりに挑むhaccobaの事例を紹介する。
海外では増え、日本では減る酒蔵
――現在の日本は、清酒の製造に必要な「酒類製造免許(酒造免許)」の新規発行が難しい状況です。
佐藤氏 いち造り手としての感想ですが、実は酒造りを事業として始める上で、それ自体はさほど高いハードルにはなっていません。確かに酒類製造免許は規制されているのですが、代わりに私たちは「その他の醸造酒製造免許」を取得しています。
この免許の範囲で製造が認められているその他の醸造酒というのは、お米以外の原料をわずかでも、極端に言えば塩一粒でも混ぜて発酵させていれば該当します。ですから、その他の醸造酒といっても、実質的には日本酒と変わらないものを造れます。
ただ業界全体の将来を考えたときにどうか、というと話は変わってきます。日本国内では日本酒造りの新規参入は規制されていますが、一方で海外では酒蔵が増加しているのです。
日本では年間で数十軒単位で酒蔵が減少している※1。このままいくと、近い未来に酒蔵の数が逆転してしまう恐れがあります。そうなると技術の面でも追い抜かれ、日本酒のイニシアチブを日本が取れなくなる恐れも出てきます。
※1:国税庁「酒類製造業及び酒類卸売業の概況」
それを回避するべく、仲間の酒蔵とともに「クラフトサケブリュワリー協会」という業界団体を設立し、さまざまな活動もしています。
――haccobaで造っているお酒の特徴を教えてください。
佐藤氏 昭和時代に刊行された「諸国ドブロク宝典」という書籍があります。民間で伝承されてきた全国各地のお酒造りの話を収めた書籍ですが、このような話にこそ面白みがあると思っており、僕たちはこれをバイブルにしています。
例えば、昔はどぶろくの製法の1つに、「唐花草(からはなそう)」という日本に自生する在来種のホップを使用した「花酛(はなもと)」というものがありました。残念ながら現在では法的な規制によって廃れましたが、これに着想を得て、在来、外来のホップのハイブリットからなる「はなうたホップス」というお酒を造りました。
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