エッジにも浸透する生成AI、組み込み機器に新たな価値をもたらすか:MONOist 2025年展望(2/3 ページ)
生成AIが登場して2年以上が経過しエッジへの浸透が始まっている。既にプロセッサやマイコンにおいて「エッジAI」はあって当たり前の機能になっているが、「エッジ生成AI」が視野に入りつつあるのだ。
AI機能の搭載で進化するPC系プロセッサ、さらに先を行くNVIDIA
今後のエッジAIの成長に大きく関わってくるのが生成AIである。冒頭で紹介したように、スマートフォンやPCに生成AIの機能が搭載されるようになっているが、全てをクラウド上で処理するのではなく、エッジである端末側にもAI処理を分散して行うような仕組みになっている。
x86やArmの高性能プロセッサを用いる組み込み機器のエッジAIに大きな影響を与えるとみられるのが、マイクロソフトがWindowsベースのPCで展開している高度なAI機能を持つ「Copilot+ PC」だろう。Copilot+ PCは要件として、プロセッサやSoCに対して40TOPS以上のAI処理性能を求めている。
組み込み機器向けでも、この40TOPS以上のAI処理性能を持つプロセッサを利用する機会は今後確実に拡大していくことになるだろう。開催中の「CES 2025」でも、インテルがプロセッサ全体のAI処理性能を99TOPSまで高めた「Intel Core Ultra 200Hシリーズ」を、AMDがNPU単独で50TOPSのAI処理性能を発揮する「AMD Ryzen AI Maxシリーズ」を発表しており、非x86プロセッサでCopilot+ PCを展開するクアルコムも含めて今後も競争が続きそうだ。
AI技術の進化をけん引してきたNVIDIAも、エッジと生成AIの融合を積極的に推進している。前世代アーキテクチャ「Hopper」の5倍となる20PFLOPSのAI処理性能を達成した「Blackwell」は、組み込み機器向けAIボードのブランドである「Jetson」への展開も計画している。
BlackwellベースのJetsonである「Jetson Thor」はFP8のAI処理性能で800TFLOPSを発揮するとされており、2025年前半に正式発表される予定だ。そして、このJetson Thorの市場投入を待つことなく、NVIDIAは現行の「Jetson Orin」世代の製品の展開をさらに拡大して“エッジ生成AI”の市場での優位性を確立する取り組みを進めている。
2024年12月には、普及価格帯に設定している「Jetson Orin Nano」の開発者キットについて、AI処理性能が従来比で70%増となる67TOPSに向上した「Jetson Orin Nano Super開発者キット」を発表した。価格も従来の499米ドルから半額となる249米ドルに値下げしており、先述したPC系プロセッサに対抗する体制を整えている。
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