カシオが作ったモフモフAIロボット 生き物らしい「可愛さ」をどう設計したか:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(34)(2/4 ページ)
カシオ計算機が2024年11月、AIペットロボット「Moflin」を発売した。ペットロボット市場はベンチャーの製品が多い印象だが、なぜ大手メーカーであるカシオ計算機が参入したのか、同社が蓄積してきたメカトロニクス技術をMoflinにどう生かしたか、お話を伺った。
毛はモフモフの架空の動物
――サイズ感や手触りも大事ですよね。毛が生えていた方がいいのかどうか。これまでのペットロボットって、毛が生えたものは少ないような気がします。
二村氏 そうですね。やはり触れた際の感触が大事だなっていうのは、初めから分かっていました。生き物らしさを出すには、プラスチックの質感はどうしても適していませんでした。それと小動物に見せたいと考えていたので、手のひらサイズに収めることはかなり意識しました。
――やはり手足を付けなかったのは、かなりの英断かと。
二村氏 手足を付けると、途端に構造が複雑になってしまうんです。それと、ロボット自体が移動しなくてもよいのではないかと考えました。
――あ、なるほどなるほど。そこはポイントかもしれないですね。これはモチーフとして何か具体的な動物があるんでしょうか。
市川氏 具体的なモチーフはなく、架空のキャラクターとしてデザインしています。実際の生き物に寄せると、多分、ギャップでどうしても「ロボットっぽさ」が出てしまうと思っています。小動物でも猫の赤ちゃんでも、Moflinの“飼い主(オーナー)”の方が自由に受け止めていただければと。
――この中にはかなりのセンサーが入っていると思うんですけど、具体的には何をどうセンシングしているんでしょうか。
二村氏 センサーとしてはタッチセンサーや加速度センサー、照度センサーがあります。それから動作には直接関係ありませんが、安全のために温度センサーを入れています。あとは、センサーではないですがマイクも入っています。
――これ、外からはセンサーがどこにあるのか全く分からないですね。
二村氏 そういったものが見えるのはあまり好ましくないと思っているので、目立たないように設置してあります。構造的には毛皮の内部に筐体が入っていて、そこに取り付けているイメージです。毛皮越しでもしっかりとセンシングできるように、センサーの感度を調整して設計しています。
――この目の部分ですが、製品写真で見ると目の周りの毛がきれいにかき分けられていますけど、実際にはかなりもふもふしていて、自分でかなりかき分けないと見えないですね。
市川氏 そうですね。そこも狙いの1つです。あまり目がはっきりと見えてしまうと、まばたきなどをしないと不自然に見えます。Moflinにはそうした機構がないので、寝ているしぐさも表現したいとなると、ある程度隠れている方がいいと判断しました。
加えて、Moflinのオーナーご自身の好みで、目を出すのか隠すのかを選んでいただければという考えもあったので、あえて隠れるようにしています。
――ここはユーザーが自由にデザインというか、扱っていいっていう要素を残したってことなんですね。
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