日産ホンダの検討事項は協業から経営統合へ、ただし「自立」が前提:製造マネジメントニュース(2/3 ページ)
日産自動車とホンダは共同持株会社設立による両社の経営統合に向けた検討に関する基本合意書を締結した。
三菱自動車はどうする? ルノーやGMは? 鴻海は?
三菱自動車は2024年12月23日、ホンダと日産自動車が基本合意した経営統合に向けた検討に参画する可能性などを検討することに合意し、3社で覚書を締結した。2025年1月末をめどに、どのように参画するのか結論を出すことを目指す。
三菱自動車 社長の加藤隆雄氏は「経営統合に向けた協議を開始する決定を歓迎する。当社の事業規模や得意とするマーケットは日産自動車やホンダとは多少異なる。日産自動車やホンダがSDVやソフトウェアなどの先端技術の開発に注力しリードするが、当社は得意とするASEAN事業や小型ピックアップトラックなどフレーム車の技術で強みを発揮して、日産自動車やホンダのグローバルでの事業をサポートできると考えている」と述べた。
ルノーと日産自動車の関係について内田氏は「欧州市場におけるルノーやアンペアとの関係はブランドや事業を強くしていく方向の1つなので継続的に議論していく。プロジェクトごとに今後もフォローしていく」と説明した。三部氏も、General Motors(GM)とホンダの関係について「今回の話があるからと言ってGMとの関係を変えるつもりはない。日産にとってのルノー、ホンダにとってのGMのつながりは、これからの1つの強みになる。さまざまな包括的な関係を大事にしながらグローバル戦略を作っていく」とコメントした。
事前の報道で「鴻海精密工業が日産自動車に買収を提案した」とされている件については、内田氏は「そういったアプローチの事実は一切ない。アプローチがあれば取締役会できちんと審議して真摯に対応する」と否定した。
想定されるシナジー効果は? 人員削減はある?
具体的なシナジー効果は、統合準備委員会での協議やデューデリジェンスの結果を踏まえた分析によって検討していく。経営統合が実現した場合、直近の実績の単純な合算でも売上高は30兆円以上となる。営業利益は現状の業績見通しをベースに合算すると1兆5700億円だが、日産自動車の事業構造改革の推進により底上げするとともに、1兆円以上のシナジー効果の創出によって営業利益3兆円を目指す。
2026年8月に共同持株会社が発足するため、シナジー効果や成果が出始めるのは2030年の手前、シナジー効果を最大限に刈り取れるのは2030年以降だと見込んでいる。
「10年後にはモビリティのビジネスの世界は大きく変わる。研究開発して生産して、それを売るというビジネスモデルさえ覆る。そこで戦う力を2030年くらいは持っていないと、単独ではとても勝負にならないという危機感が今回の議論のスタートだ。規模感だけで勝てるわけではない。結局は喜んでもらえる商品やサービスを作れるかどうかだ」(三部氏)
シナジー効果が想定される7つの領域に言及した。両社で市場や商品ラインアップが重複する部分があるものの、三部氏は「北米市場のビジネスのように、重なっているからと言って効率が悪いわけではない。経営統合すれば戦略の自由度が増すと考えており、あまり心配していない。シナジー効果は必ずしも減産や人員削減を意味するのではなく、台数を伸ばしたり市場を広げたりするような施策を基本的に考えていく。削って削って効率のいいところだけを残して組み合わせるような考え方は持っていない」と述べ、内田氏も「重なっている方がシナジーは生まれるのではないか」と前向きな見方を示した。
1 | 車両プラットフォームの共通化によるスケールメリットの獲得 | ・商品力向上や原価低減、開発効率の向上、生産プロセスの共通化による投資効率の向上 ・販売台数や稼働台数の拡大による台当たりの開発コスト低減。バッテリーを活用した電力調整など新たなサービスでのスケールメリットの活用 ・エンジン車や電動車の各モデルについて短期〜中長期で車両の相互補完 |
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2 | 研究開発機能の統合による開発力向上とコストシナジーの実現 | ・SDV向けプラットフォームの基礎的要素技術の研究、バッテリーやeAxleなどEV主要部品の仕様共通化や相互供給を既に検討中 ・経営統合が実現した後は、基礎研究を含む研究開発機能全体でより一体化することを目指す。重複開発を統合することで開発費削減 |
3 | 生産体制の最適化 | ・工場の相互利用により、稼働率を向上させて固定費の大幅削減を目指す |
4 | 購買機能の統合によるサプライチェーン全体での競争力強化 | ・研究開発機能の統合や生産体制の最適化の効果を最大化するため、取引先と協調しながら共同調達などサプライチェーンの高度化と最適化を進める |
5 | 業務効率化によるコストシナジーの実現 | ・両社の業務関連システムや間接業務などの統合、機能の高位平準化による大幅な経費削減 |
6 | 販売金融機能の統合に伴うスケールメリットの獲得 | ・販売金融機能の事業規模を拡大して新たな金融サービスなどを提供する |
7 | 知能化や電動化に向けた人材基盤の確立 | ・両社の人事交流や技術交流を通じて人的スキルを高度化する ・人材市場への相互アクセスによる優秀な人材の確保を目指す |
8月に発表した協業プロジェクトの検討は引き続き順調だとしている。足元のことは協業で、その先のことは経営統合の中で可能性を検討していくという。
帝国データバンクが発表した自動車業界のサプライチェーン動向調査によると、ホンダと日産自動車で重複する取引先は9242社あり、約7割が売上高10億円未満だという。売上高10億円未満の取引先の比率は、自動車産業全体と比べてやや低い。調査対象の取引先にはサプライヤーだけでなく人材派遣やシステム開発、工事、運送などの業種も含まれるが、重複する取引先で最も多い業種は部品や金型のサプライヤーだ。
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