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「2024年」は物流対策も製造業の主要業務に、“製配販”の連携をタギングでものづくりDXのプロが聞く(2/3 ページ)

Koto Online編集長の田口紀成氏が、製造業DXの最前線を各企業にインタビューする「ものづくりDXのプロが聞く」。今回はサトーの最新の取り組みについて聞きました。

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Koto Online

自社の作業現場も見学対象、江東サポートセンターで棚卸し期間の短縮(3日→3.5時間)

田口 技術的に新しいというよりも、アイデアが効いているという感じですね。

天川 はい。われわれは技術から入るのではなくて、お客さまの課題から入っていきます。そこでマッチするのはRFIDかもしれませんし、場合によっては位置測位と呼ばれるポジションを把握する仕組みとの連携をお勧めすることもあります。

 現場においてお客さまの課題を把握し、担当営業およびわれわれのメンバーが一丸となって現場を改善するという点に、当社では最も力を入れているのです。

田口 こちら(下写真)は、鉄製品にタグが付いていますが、RFIDに必要な電波がシールドされないのでしょうか。


金属に付けられたRFIDタグ[クリックで拡大]出所:Koto Online

天川 確かに、金属にタグを直接貼ると電波が減衰してしまうのですが、これはご覧の通り、RFIDを一部浮かせてタグをつけることで、減衰することなく読み取りやすくなっています。

田口 なるほど。使い方も重要なのですね。

天川 はい。タギングのポイントはいかにして、正確なデータを欲しいときにあげられるかであり、その手法の1つがRFIDです。

 お客さまの方が、当然のことながら現場のことをよく分かっていらっしゃいますので、工場長のような立場の方に見ていただくと、「こうやってやればいいのか」と気づいていただけることも多いです。S-cubeに来ていただくときはもう、実際に使う現場の方に考えてもらうツールとして、「武器」を渡すような感じですね。

 例えば、「このタグの付け方だと嫌だ」とか、逆に「こういう付け方だと作業が楽になる」と分かると、現場でも率先してやってもらえます。「新しい方法に変わったから、やれ」と伝えるだけでは現場は動きませんよね。

 RFID導入時に製造業においてとくに重視されるのは、いかに現場のオペレーションを変えず、現場の方の負担にならない方法で導入するかです。

 先ほどお見せしたRFIDを貼った指示書ならば、作業者自身には記録作業をさせずに、しかし指示書通りの作業が行われているかを正確に把握できるので、お客さまのニーズにもかなっています。必要なときにいつ、どのように付けるかをうまくご提案できるのかが、サトーの強みです。

田口 御社製ラベルプリンタの保守業務を行うサポートセンター (東京都江東区)も、お客さまが見学できるのだそうですね。2024年上半期のプレスリリースによると、RFIDを活用して棚卸を3.5日から3時間へ短縮したと発表されています。相当な効率化が進んだのですね。

天川 そうなのです。スマートフォンを装着したRFIDリーダー(下写真)をかざすだけで、周囲の在庫品に付与されているRFIDを読み取って在庫を把握できます。

スマートフォンを装着したRFIDリーダー
スマートフォンを装着したRFIDリーダー[クリックで拡大]出所:Koto Online

 以前は3.5日かけて2371点の部品(実証実験時)の棚卸しを行っていたところを3時間に短縮できたことで、作業者の精神的な負担は減りました。これによって、担当者は本来の業務に専念できるようになり、効率化が実現しました。少量多品種化が進む中で、効率化への取り組みは欠かせません。

 われわれのRFID技術を、お客さまにより身近に感じていただくためには、われわれが使ってどれくらい効果が出ているのかをきちんと実証した上で、そこに来て実際に触っていただくことなのです。実際に動いている現場で生の声を聞いていただくと、説得力が全く違います。

田口 実際にビジネスを回しているということを示せるのはパワフルですよね。見ていただいたお客さまに、「このサポートセンターみたいなもの丸ごとを作ってくれ」といわれることもあるのでは。

天川 ありますね。

製造と物流、販売の連携をタギングで

田口 技術的には、どのような変遷があるのでしょうか。

天川 RFIDの技術自体は20年ほど前からあるのですが、その間に3回ほど技術進歩のサイクルがありました。現在は、RFIDのチップの技術が進み壊れにくくなり価格も下がっているので、お示しした指示書などに貼り付けて使用できるようになりました。

 例えば、アパレル業界において海外の生産現場でタグを付けた状態で日本国内に入ってくるのが主流になっていまして、同様に他の業種でも製造過程でタグを付けて物流までつないでいきたいというお客さまが増えているように思います。

田口 メーカー側としては、ものが作られて物流に運ばれて小売店に行って……という一連のことを本当に把握したいのですが、実際には物流に製品が一度渡るとトラッキングができなくなることが多いですよね。

 でも御社は、トラッキングできるポジションにいますよね。関係企業との協調は必要だとは思いますが、データを提供できれば分析もはかどるでしょうね。


「メーカー側としては、ものが作られて物流に運ばれて小売店に行って……というこの一連のことを本当に把握したいのですが、実際には物流に製品が一度渡るとトラッキングができなくなることが多いですよね」(Koto Online編集長 田口氏)[クリックで拡大]出所:Koto Online

天川 まさしく、“製/配/販”の連携※1ですね。私が所属する当社の「市場戦略部」も2024年から、“製/配/販”に集中して横串で動くのがミッションに含まれるようになっています。

 われわれサトーの強みは業種に応じた事業部を設けて流通、製造、食品、物流、それから別会社※2となりますがヘルスケアといった、各現場の物流につながる技術を持っているので、そこをうまく活用して現場にどんどん入りながら、お客さまのニーズをすくい取るという、なかなか他にはないビジネスモデルです。

※1 メーカー(製)、卸/物流(配)、小売(販)を連携することで、サプライチェーンの改善を図ること

※2 サトーホールディングス傘下のサトーヘルスケア

田口 これがある程度形になると、まさに、あらゆるものがつながった状態になるのですね。

天川 初めに付けたタグが、最後まで使えるというのがベストですね。アパレルの例のように、作る段階から運送、販売までを全て、RFIDのタグで流せる。そのハブ役をわれわれが担うことで、社会の役に立てると考えています。

田口 ロジスティクスを最適化しやすくできますね。垂直統合ができないという社会では、どうしても効率が悪くなってしまいます。物流サイクルも速くなっていると聞きます。

天川 そうですね。社会環境の変化が大きいですね。

 例えば消費者の購買行動が、店舗から通販に 変わってきているために、物流における物の出し方もどんどん変わってきているのです。コロナ禍で一気に加速したような気がします。パート、アルバイトの人材不足もあります。

 われわれとしては、社会環境の変化に合わせた物流サイクルに合わせて、物の出し方に対するラベルを含めたタギングの仕方をご提案していくことになります。

 以前ならば、量販店に納品するときに箱単位での明細を貼って店舗側の受け入れを楽にするというラベルの仕組みも提供していたのですが、今度は配達先が個人宅になると、送り状や明細書が必要になるなどもっと細分化されるので。物流の手間はかなり増えています。

CORE CONCEPT TECHNOLOGIES INC.

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