NTTコミュニケーションズが陸上養殖、ICTで効率化し地域の産業に:スマートアグリ(1/3 ページ)
NTTコミュニケーションズはICTを活用した循環式陸上養殖システムを手掛ける子会社NTTアクアを設立し、事業を開始した。
NTTコミュニケーションズは2024年12月2日、東京都内で会見を開き、ICTを活用した循環式陸上養殖システムを手掛ける子会社NTTアクアを設立し、事業を開始したと発表した。
過疎化と人口流出を食い止めるための新産業の創出、気候変動や食料需要の世界的な拡大に伴う食料安全保障の強化において陸上養殖が貢献すると見込む。陸上養殖事業への参入障壁を下げ、“誰もが参加できる陸上養殖”の実現を目指す。2030年までに累計で数百億円規模の収益を見込んでいる。
写真左から、NTTコミュニケーションズ 執行役員 ソリューション&マーケティング本部 ソリューションコンサルティング部 部長の渡辺聡氏、NTTアクア 代表取締役社長の山本圭一氏。手前にあるのが養殖されたアーラミーバイ[クリックで拡大]
バクテリアを使わない効率的なろ過システム
NTTアクアでは陸上養殖自体は行わず、ICTを活用した循環式陸上養殖システムの研究や開発、提供を行う。対象地域は沖縄県を除く日本全国だ。各地に拠点を持つNTTコミュニケーションズの強みを生かし、自治体や地域と連携しながら取り組んでいく考えだ。
NTTコミュニケーションズは、陸上養殖の研究開発や卵から仔魚期の飼育を行う種苗生産を手掛ける紅仁と2023年から沖縄県で共同研究を行ってきた。この研究を通じて、紅仁が持つろ過技術と、NTTコミュニケーションズのICTプラットフォームを組み合わせた循環式陸上養殖システムを開発した。沖縄県での循環式陸上養殖システムの提案は、NTTアクアではなく紅仁を通じて行う。
NTTアクアは紅仁と包括連携協定契約を結び、陸上養殖事業を開始もしくは拡大する事業者向けに循環式陸上養殖システムを提供する。対象となる魚種は海水魚であるハタ類2種類でスタートするが、養殖する地域の水温や、市場での優位性なども考慮しながら順次拡大する。
NTTアクアのシステムの特徴はろ過にバクテリアを使わない点だ。水のろ過にバクテリアを使う場合、バクテリアを繁殖させてアンモニアなどの有害物質を分解するため、飼育水槽の6〜8割に相当する面積の生物ろ過槽が必要だ。また、バクテリアが生き物であるためろ過の効率が不安定になる場合もある。
NTTアクアのシステムではこれが不要になるため、狭い土地でも陸上養殖が可能になる。たたみ1畳ほどの面積で100トンの水を処理できるなど、面積効率が高い。また、メンテナンスも容易で作業効率が向上できる他、魚の成長に合わせたろ過によって水槽の魚の密度を高められる。
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