リチウムイオン電池の性能を左右する「電極」に求められる4つの特性:今こそ知りたい電池のあれこれ(27)(1/3 ページ)
注目を集めるリチウムイオン電池をはじめ「電池のあれこれ」について解説する本連載。今回から、リチウムイオン電池の「電極」について深掘りしていきます。まずは、リチウムイオン電池の製造工程を確認しつつ、電極に求められる4つの特性を紹介します。
これまで本連載では、電池の材料から周辺技術、時には安全性や環境影響、リチウムイオン電池以外の次世代電池など、幅広く取り扱ってきました。
電池を取り巻く要素は数多く、どこに注目するかによって記事として書くことができるテーマもいろいろありますが、とても重要な要素でありながら、これまで「とある理由」であまり深掘りしてこなかったものもあります。
その中から今回は、リチウムイオン電池の「電極」に注目した解説をしていきたいと思います。
リチウムイオン電池の電極構造
図1は、リチウムイオン電池の電極構造を断面から見た模式図です。
正極、負極ともに、集電体となる金属箔の上に電極合材が形成されています。一部例外もありますが、一般的には正極はアルミ箔、負極は銅箔を集電体として用います。
電極合材を形成する材料は、電池容量を担う「活物質」、電極抵抗を低減させるために添加する「導電助剤」、各材料の結着を担う高分子材料である「バインダー」の3つに大別でき、これらの材料の組み合わせや混合比によって決まる電極の組成は、電池の性能を大きく左右する要素の一つです。
正極、負極それぞれの代表的な活物質については以前にも紹介しましたが、正極はリチウムイオンを含む金属酸化物を用いることが多く、その金属種によって特性や結晶構造の異なる幾つかの種類に分けることができます。
対する負極はグラファイトやハードカーボンといった炭素系の材料が最も一般的であり、正極同様の金属酸化物であるチタン酸系の材料や、その他にもシリコンなどが用いられる場合もあります。
先述したどの材料であっても、正極活物質と負極活物質を組み合わせることで、充放電に伴って正極と負極の間でリチウムイオンをやり取りして動作する「リチウムイオン電池」と呼べる電池として動作します。
電極の構成を決定する要素は、用いる材料の種類やその混合比だけではなく、その製造工程も大きく関わってきます。
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