祖業を継承する日立インダストリアルプロダクツが目指す“素敵なモノづくり”:日立の新成長エンジン「コネクティブ」の全貌(2)(3/3 ページ)
日立の製造業としての側面を色濃く残すコネクティブインダストリーズ(CI)セクターに迫る本連載。第2回は、日立の祖業であるモーターの事業を継承する日立インダストリアルプロダクツをクローズアップする。
中高圧の電力を用いた電動化に積極的に関わっていく
MONOist 現在の日立躍進の象徴ともいえるLumadaですが、その存在をどのように捉えていますか。
小林氏 現在、日立インダストリアルプロダクツを含めCIセクターでプロダクトを扱う事業体は、強いプロダクトを単品で売っていくだけでも十分に収益を生み出せる状態になっている。ただし顧客は、その強いプロダクトを使ってさらに何かを成し遂げたいはずであり、本来はそこで日立のDSS(デジタルシステム&サービス)セクターが手掛けるデジタルソリューションなどを役立てられる。
Lumadaというコンセプトが出てくる前は、それらのデジタルソリューションはDSSセクターの顧客との協創の成果でノウハウが詰まっており、それを外部に明かしたくないという意向もあってわれわれプロダクトを手掛ける側もそれらのデジタルソリューションの中身が分からないので顧客に提案することはできなかった。しかしLumadaでは、ユースケースという形でその成果が一定程度共有されて内容を理解できるようになり、われわれのプロダクトを使って何かを成し遂げたい顧客に対して組み合わせとして明確に提案ができるようになった。
CIセクターの強いプロダクトにデジタルの掛け算ができるようになり、産業分野で幅広い顧客基盤を持つ営業がフロントに立ってアプローチする形で、Lumadaのメリットを大きく広げることができるようになっている。かつてはセクターやBUなどで分かれて互いに連携することができていなかったが、Lumadaを中核として、それぞれどのような貢献ができるのかをオープンマインドで考えられるようになった。
MONOist 他セクターやBUとの連携では、マルチポートEVチャージャ関連の取り組みで、DSSセクター傘下のGlobalLogicと連携したアプリ開発を行っていますね。
小林氏 GlobalLogicは、従来の日立と異なるスピード感を持っており大きな刺激になっている。例えば、われわれが扱うプロダクトはB2Bと言われるが、本来その開発を進める上ではB2Bの先にある最終ユーザーまでを視野に入れたB2B2Cの考え方が必要だ。そこで重要な役割を果たすのがデジタルソリューションだが、プロダクト側はモノづくりのことだけを考えてデジタルは外に任せるというような考え方ではダメだろう。
今後は産業分野のプロダクトもソフトウェアディファインドな時代に入っていくことは確実で、新規開発の体制も変わっていかなければいけない。ソフトウェアをアップデートすればプロダクトの性能も変わるわけで、そういった観点でGlobalLogicからはさまざまなアイデアが出てきている。
MONOist 日立インダストリアルプロダクツで扱っている大型産業機械向けの製品は、今後のどのような価値を持つようになりますか。
小林氏 現在、低圧の電力で動くものの電動化がどんどん進んでいる。われわれが言う“低圧”には乗用のEVも含まれるが、日立インダストリアルプロダクツが扱っているのはそれよりも高い中高圧の電気システム品が中心だ。トラックやバス、そして建機、航空機、船舶など現時点では内燃機関が必要なものも、今後は中高圧の電力を用いた電動化が進むだろう。今後8〜10年を見据えてこの中高圧の電動化トレンドに対応できる企業はあまり多くないので、ぜひ積極的に関わっていけるようにしたい。例えば、当社の主要拠点である土浦事業所と日立建機の土浦工場は隣接しており、建機での電動化に向けて連携する体制ができている。
主力製品のポンプや圧縮機はデジタルソリューションで強化していく。アンモニアや水素、SAF(持続可能な航空燃料)などのエネルギートランジション関連やCCUS(二酸化炭素回収、有効利用、貯留)などの取り組みが進む中で引き合いも強い。
現在の日立を外から見ると、ITソリューションが中核にあってモノづくりを遠ざけているようなイメージがあるかもしれない。しかし、日立インダストリアルプロダクツとしては“素敵なモノづくり”でこのイメージを変えていきたい。ここまで話してきたように、当社で扱う非量産系システムのモノづくりもデジタル活用でいろんなことができるようになっている。そういったモノづくりのすごさ、素晴らしさを示していきたい。日立らしいモノづくりで未来を変えていくことで、ワクワク感を持ってやれる会社にしていく。
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