ルネサス史上最高性能の産業機器向けMPU、1チップで9軸のモーター制御も可能:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスが産業機器向けとして同社史上最高性能となるハイエンドMPU「RZ/T2H」を発表。Armの「Cortex-A55」4コアと「Cortex-R52」2コアに加え、9軸のモーター制御に必要な周辺機能、産業用イーサネットの制御機能などを1チップに集積し、競合他社品と比べて性能や機能で大きく上回るとする。
ルネサス エレクトロニクスは2024年11月26日、産業機器向けとして同社史上最高性能となるハイエンドMPU「RZ/T2H」の発売と量産を開始したと発表した。Armのアプリケーションプロセッサ「Cortex-A55」4コアとリアルタイム処理用プロセッサ「Cortex-R52」2コアに加え、9軸のモーター制御に必要な周辺機能、産業用イーサネットの制御機能などを1チップに集積し、競合他社品と比べて性能や機能で大きく上回るとする。多軸のモーター制御が求められる産業用ロボットやAGV(無人搬送車)、工作機械や製造装置の制御システムを主な用途に想定する。
同社は産業機器向けのハイエンドMPU「RZファミリ」の中で、モーター制御や機能安全、産業用イーサネットに対応するリアルタイム制御機器向け製品として「RZ/Tシリーズ」を展開してきた。実際に、2022年6月発表の「RZ/T2M」、2023年4月発表の「RZ/T2L」ともCortex-R52の搭載によるモーターのリアルタイム制御が機能の中核となっていた。
RZ/Tシリーズにおいて最上位に位置付けられるRZ/T2Hは、これまでのRZ/Tシリーズでは採用していなかったアプリケーションプロセッサとしてCortex-A55を4コア搭載している。最大動作周波数は1.2GHzで、外部メモリ用に高速データ転送規格LPDDR4-3200(32ビット)をサポートし、Linuxベースの制御システムのアプリケーションの高速処理に対応する。
一方、2コア集積するCortex-R52の最大動作周波数はRZ/T2Mの800MHzを上回る1GHzまで高めるとともに、各コアに大容量のTCM(密結合メモリ)を合計576KB搭載する。モーター制御用の周辺機能に高速アクセス可能なLLPP(低遅延ペリフェラルポート)バスや、三角関数の処理を強化するTFU(三角関数演算器)も採用した。
例えば、アプリケーション処理性能は、Cortex-A55の前世代に当たる「Cortex-A53」を搭載する競合他社品と比べて1.26倍を達成。リアルタイム処理性能では、Cortex-R52の前世代に当たる「Cortex-R5」を搭載する競合他社品と比べて、モーター制御の電流ループ処理性能で1.7〜2.1倍、モーター制御用レジスタアクセス性能でPWMタイマーが4.7倍、A-Dコンバーターが8倍、電流ループで使用される三角関数処理性能で2.0〜3.8倍を実現している。
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