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ニワトリが先のアプローチでIoT導入、まずはラズパイで生産管理指標を可視化せよあらためて取り組む中小製造業のIoT活用(3)(1/2 ページ)

本連載では、あらためて中小製造業がIoT導入を進められるように、成功事例を基に実践的な手順を紹介していく。第3回は「IoTによる製造工程管理の強化」をテーマに、ラズパイを活用した生産管理指標の可視化手順と管理のポイントについて解説する。

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 前回はIoT(モノのインターネット)を導入する目的と、IoT導入を成功に導く上での経営者のあるべき姿勢について説明しました。

 IoT化を進める際には「卵が先かニワトリが先か」の議論に陥りがちです。卵が先のアプローチで体系的に工場管理の全てをデジタル化してもシステムを導入するまでに何年もかかりますし、せっかくシステムができても現場が使いこなせず全く新システムが定着せず、以前までに慣れたやり方に戻るケースが多くあります。

 だからこそ、ニワトリが先のアプローチを取り、まず現場にハードルが低く効果が出やすい箇所に対してIoT導入を行い、その効果を現場の方に認識してもらうことが重要です。そこで今回は「IoTによる製造工程管理の強化」をテーマに、ラズパイを利用した生産管理指標(可動率、稼働率、不良率)の可視化手順と管理のポイントについて解説します。

⇒連載「あらためて取り組む中小製造業のIoT活用」バックナンバー

1.工程管理のポイント

 国内中小製造業では、昭和の時代に確立した生産日報とグラフ化による現場管理を行っているのが一般的です。生産日報には以下の内容を記録しています。

  • 工程、生産日、生産直、作業者、作業時間、生産品番(または背番号)、生産数、不良数、不良原因、停止時間、停止原因

 これら生産日報の情報を収集して以下のグラフを作成しています。

  • 不良率推移グラフ、パレート図
  • 設備停止グラフ、パレート図

 この生産日報とグラフ化による現場管理において、以下のような問題が発生しています。

  • 問題1:現場で手書きした紙を収集して事務所でExcelに入力すると、何日か遅れて見ることになる。作業者の手書きやExcelの入力の工数がかかる
  • 問題2:不良実機から情報を収集する際に不良の原因が層別されておらず後から集計できない
  • 問題3:設備停止については曖昧な記録に留まるケースが多い

 これらの問題を解決するためにIoT導入と現場改善の両面から以下のような問題解決を図ることが重要です。

  • 対策1:設備や簡単な手入力で現場から生産日報に必要な情報を収集、蓄積、可視化を行う
    ⇒情報収集工数の削減とリアルタイムな可視化による異常対応の迅速化が可能
  • 対策2:不良の原因を層別で見直す。過去の不良実績から原因の種類を設定する。その他項目の細分化にも着目する
    ⇒不良や設備停止の発生状況を精緻に把握することにより、改善のポイントが明確になり改善の精度が向上
  • 対策3:設備から直接「自動運転」「異常停止」「段替え」の稼働情報を収集する
    ⇒設備の稼働状況を精緻に把握することにより、改善のポイントが明確になり改善の精度が向上

2.ラズパイの特徴

 ラズパイはRaspberry Pi(ラズベリーパイ)が正式名称でArmプロセッサを搭載したシングルボードコンピュータです。イギリスのRaspberry Pi Foundation(ラズベリーパイ財団)によって教育用コンピュータとして開発されていますが、産業用でも多くの利用実績があります。

図1
図1 ラズパイの機器構成[クリックで拡大]

 ラズパイの特徴は以下の通りです。

(1)機器が低価格かつバリエーションが豊富

 最低機種のPico(Raspberry Pi Pico)は数千円から購入可能でかつ、3B(Raspberry Pi 3 Model B)、4B(Raspberry Pi 4 Model B)、5B(Raspberry Pi 5 Model B)とより高機能な機種が市場投入されておりバリエーションが豊富。

(2)インターネット上に多くの情報が掲載されている

 ラズパイ使用例の情報がインターネットに多数掲載されているため、ある程度自力で開発していくことが可能。

(3)カメラ、Wi-Fi接続、画面出力、有線LAN接続などの豊富なインタフェース

 標準機能でWi-Fi接続、画面出力(HDMI)、有線LAN接続(イーサネット)、Bluetooth接続が可能でかつ、カメラ接続も簡単に拡張可能なため、アナログ、デジタルデータだけでなく画像収集などの多彩な情報収集が可能。

(4)高級言語や画像解析ソフトなど無償ソフトでのアプリ開発

 高級プログラミング言語のPython(パイソン)やOpenCVなどの画像解析ライブラリなど、無償で誰でも自由に改変や再配布が可能なOSS(オープンソースソフトウェア)による最新技術を活用したアプリ開発が可能。

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