オフィスとモノづくりの未来に向けてイトーキ中央研究所が5つの研究テーマを推進:3Dプリンタの可能性を探る(2/3 ページ)
イトーキは、同社の研究機関であるイトーキ中央研究所が掲げる「10年後のオフィスとモノづくりに関するビジョン」と、その取り組みを具現化した次世代オフィス家具のプロトタイプ第1弾を披露した。
流動的オフィス向けワークテーブルのプロトタイプモデル
今回プロトタイプモデルとして製作したワークテーブルでは、ポリプロピレン(PP)製のテーブル天板に対し、エッジと枠部などの形状を直接3Dプリンタで造形している。天板の素材だけでなく、3Dプリンタで使用する樹脂材料もPPベース(少量のエラストマーを添加)のものを用いており、使用後の分解性を意識したモノマテリアルを実現している。さらに、天板の裏面には、ジェネレーティブデザインを活用して形状を検討し、3Dプリンタで造形した補強パーツが施されており、テーブルとしての強度を担保している。
「サーマルリサイクルも1つのリサイクルの在り方だと認識しているが、将来的には、最終製品を製造販売するメーカーとして、はじめからリサイクル性の高い素材を選択してモノづくりを行うこと、製品が単一素材でできていること、さらに使用後に廃棄されたものをきちんと回収し、材料として再生したものをメーカーとして安定して確保することが重要だ。今回のプロトタイプモデルでは、シンプルな構造を備える一般汎用(はんよう)プラスチックであるPPを主材に天板を製作することにした」(イトーキ 中央研究所 工藤芙弥氏)
プロトタイプモデルの天板の芯材部分には、梱包(こんぽう)用材料などに使用されることもあるPP製の発泡樹脂板が採用されており、軽さが魅力であるという。さらに、このPP製の発泡樹脂板の表面を滑らかにし、ある程度の構造をもたせるために、板の両面にPPシートを張り付けている。
そして、これを母材に、リサイクリエーション慶應鎌倉ラボの3Dプリンタを用いて、エッジと枠部、天板裏の補強形状をPPベースの材料で造形している。造形時間は、1個当たり1.5〜2時間ほどで、造形後の仕上げ処理などは一切行っていないという。
こうして完成した天板と、プロトタイプモデル向けに設計したアルミ素材のフレームを組み合わせて、流動的オフィス向けワークテーブルとして具現化した。テーブル全体の重量は約6.5kg(天板のみだと約3kg)で、従来のオフィス家具に使用されるメラミン化粧板を用いた同サイズのテーブルと比べて約50%の軽量化を実現しており、頻繁なレイアウト変更にも対応でき、非力な人でも1人で動かせる重さとなっている。
「3Dプリンタ材料については、材料押出式3Dプリンタで円滑に造形できることを目指して材料を探索した。ベースのPPだけだと反りが発生したり、積層間の接着性に問題があったりしたので、これらを改善するために少量のエラストマーを添加している。なお、ヒートベッドで加熱しながらの造形だとPP製の天板そのものが反ってしまうため、常温で安定して造形できるように材料をチューニングしている」(工藤氏)
今回はPP製の発泡樹脂板とシート(天板本体)を取り除いた3Dプリント製のパーツ部分のみを対象に、リサイクル性を検証。一度造形したものを粉砕し、リペレット化して再度造形するというサイクルで、計4回まで問題なく造形できたことを確認したという。
工藤氏は「繰り返していくと、少しずつ材料の色味がくすんでいくが、データや造形条件を変更することなく、問題なく造形できた。素材の耐久性についても思っていたよりも急激に下がっていないので、10回程度までは繰り返し利用できるのではないか。マテリアルリサイクルは完全に元の素材に戻すことは難しいが、メーカーがはじめからリサイクル性の高い素材を選択したり、リサイクル工程や造形条件の熱履歴を減らしたりすることで、より良いリサイクルにつなげられると思う。今回の検証結果のおかげでオフィス家具のプラスチックパーツが、リサイクル材料としてオフィス家具に繰り返し使用できるものだと確認できた」と説明する。
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