米国の医療データ標準化で広がる2次利用とAI:海外医療技術トレンド(111)(3/4 ページ)
本連載第91回で、米国の研究開発領域におけるアプリケーションプログラミングインタフェース(API)やデータの相互運用性標準化に向けた動きを取り上げたが、その後、臨床現場における医療データ流通やAI利用が本格化している。
改正HTI-1最終規則施行5カ月後に次期HTI-2規則案を公表
HTI-1最終規則施行5カ月後の2024年7月10日、ONC(現ASTP/ONC)は、次期バージョンとなる「医療データ、技術、相互運用性:患者エンゲージメント、情報共有、公衆衛生の相互運用性(HTI-2)」規則案を公表した。同規則案は2024年8月5日付官報に掲載され、パブリックコメントの募集を行っている(募集期間:2024年10月4日まで、関連情報)。このHTI-2規則案は、以下のような目的を掲げている。
- 21世紀治療法の実装:
- 特別な労力なく、電子医療情報(EHI)へのアクセス、交換、利用を可能にするAPI
- 情報ブロッキングを構成することのないリーズナブルで必要な活動
- 主体が、信頼された交換フレームワークと共通契約書(TEFCA)に準拠した信頼性のある交換が可能な有資格保健医療情報ネットワーク(QHIN)としての指定を受けて維持するために必要な資格を確立する
- バイデン・ハリス政権の大統領令の目標達成
- 医療ITの活用と相互運用性の促進
- 経済的および臨床的健全性のための医療情報技術に関する法律(HITECH法)
- 相互運用性の促進
- ONC医療IT認証プログラム
医療AI関連ルールが追加された現行のHTI-1最終規則と比較すると、HTI-2規則案では、地域医療連携ネットワークを支えるデータ交換基盤や、患者、医療機関、保険者、公衆衛生機関など、さまざまなステークホルダー間の医療データ交換を実現するAPIにおける相互運用性の標準化に力点が置かれている点が特徴だ。
例えば、上記HTI-2規則案の目的である「21世紀治療法の実装」の「信頼された交換フレームワークと共通契約書(TEFCA)」(関連情報)は、米国21世紀治療法およびHITECH法に基づき、個人の保健医療情報を相互交換するためのフレームワークであり、信頼された交換の原則と、信頼された交換に最低限必要な契約条件から構成される。医療情報交換に参加する主体は、TEFCAを通じて、有資格保健医療情報ネットワーク(QHIN)に適用・指定される。そして、QHINが相互接続することによって、患者が、国全体に渡る保健医療情報の交換に関与できる仕組みになっている。
医療情報交換(HIE)に関わるUSCDI規格の継続的な更新
次に≪表1>は、HTI-2規則案の中で、新設/改正が提案されている標準規格や基準をまとめたものである。
表1 HTI-2規則案における新規および改正標準規格/基準[クリックで拡大] 出所:U.S. Department of Health & Human Services「Health Data, Technology, and Interoperability(HTI-2) Proposed Rule」(2024年7月17日)を基にヘルスケアクラウド研究会作成
上記の新標準規格のうち、米国相互運用性向けコアデータ(USCDI)は、全米レベルで相互運用性のある医療情報交換(HIE)向けに標準化された医療の「データクラス」およびそれを構成する「データ要素」に関する規約である。「データクラス」は、共通テーマやユースケースによってデータ要素を集約したものであり、「データ要素」は、電子医療情報のアクセスや交換、利用のために、USCDIで定義されたデータの一部分である。
HTI-2規則案で提示されたUSCDI第4版は、2023年7月に発行された(関連情報、PDF)。参考までに、≪図4>は、USCDI第4版のデータクラスおよびデータ要素一覧である。
図4 米国相互運用性向けコアデータ(USCDI)第4版のデータクラスとデータ要素[クリックで拡大] 出所:U.S. Department of Health & Human Services「United States Core Data for Interoperability Version 4 (October 2023 Errata)」(2023年7月)
このUSCDIにおけるデータクラス/データ要素の対象範囲は拡大傾向にある。USCDI第4版を採用したHTI-2規則案の公表と同時期の2024年7月には、次期バージョンとなるUSCDI第5版が発行されている(関連情報、PDF)。さらにONC(現ASTP/ONC)は、2025年1月をめどに、USCDI第6版草案を公開する計画を打ち出しており、米国で医療データ2次利用関連事業を展開する企業は、頻繁なUSCDI更新への対応作業を継続できる体制づくりを行う必要がある。
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