シャー芯より細いスプリングコネクター、ヨコオが「世界最小」を実現:組み込み開発ニュース(1/2 ページ)
ヨコオは、電子回路を接続するコネクター部品の一種であるスプリングコネクター(SPC)について、「世界最小」(同社調べ)とする直径0.35mmの製品を開発した。同社の他事業部が手掛ける半導体検査用プローブの技術を適用することで従来品と比べて60%の小型化に成功したという。
ヨコオは2024年9月5日、電子回路を接続するコネクター部品の一種であるスプリングコネクター(SPC)について、「世界最小」(同社調べ)とする直径0.35mmの製品を開発したと発表した。同社の他事業部が手掛ける半導体検査用プローブの技術を適用することで従来品と比べて60%の小型化に成功したという。同年10月からサンプル出荷を開始し、2年後の2026年度に月産500万ピンの量産を目指す方針である。
SPCは、ピンの先端が電極パッドに接触した状態で、内部にバネを備えたチューブに押し込むことによって電気的な安定接触が得られるコネクター部品で、POGOピンとも呼ばれている。SPCのピン1本で1極となり、ハウジング内に複数のSPCを並べた多極のコネクターとすることで、より多くの電力を送ったり、より高速の信号伝送が行えるようになる。
SPCを用いたコネクターは、小型化の要求が厳しいスマートウォッチやワイヤレスイヤフォン、高速充電や高速伝送が求められるタブレット端末やノートPC、これらの両方のニーズがあるスマートグラスなどが主な用途になっている。
今回開発した新製品は、サイズの基準となるチューブの直径が0.35mm、ピンの直径が0.195mmで、定格電流は1A、接触抵抗値は100mΩ以下、バネ圧が0.2N、挿抜の耐久回数は2万回。ヨコオのSPCでこれまで最小だった製品のチューブの直径が0.85mmだったので、約60%の細径化に成功したことになる。競合他社品との比較でも、チューブの直径が0.5mmが最小とみられることから世界最小を実現できたとしている。
従来のSPCは、ピン、チューブ、バネという3つの部品から構成されているが、新製品はハウジングと接続する側のチューブの末端にプラグという4点目の部品を追加している。従来比6割の小型化を実現するために重要な役割を果たした製造技術は3つある。1つ目は、細径のチューブの内部に切削加工で穴を空ける微細精密加工技術だ。2つ目は、ピンとチューブの間で導通することによって電気を流す仕組みになっているSPCにとって最も重要になる、チューブ内面に安定して金めっきを行う表面処理技術。そして3つ目は、60%も小型化したピン、チューブ、バネ、プラグという微小部品をハンドリングしながら半自動で精密に組み立てる技術である。「直径0.1mm以下の半導体検査用プローブの技術を持ちながら今までSPCに適用できていなかったのは、一定の量産規模を可能とする半自動の精密組み立てが困難だと考えていたからだ。SPCの量産規模は、半導体検査用プローブの7倍以上となるため、量産性の課題をクリアする必要があり、今回の新製品はそのめどが立ったことも大きく貢献している」(ヨコオ FC事業部 事業部長の石橋章氏)という。
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