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新車生産が2年ぶり前年割れ、中国の苦戦や認証不正が響く自動車メーカー生産動向(3/4 ページ)

半導体の供給緩和で回復していた自動車生産が、減少局面を迎えている。日系乗用車メーカー8社の2024年上期(1〜6月)の世界生産合計は、2年ぶりに前年実績を下回った。下期も予断を許さない状況が続きそうだ。

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スズキ

 8社で最も好調だったのがスズキだ。2024年上期のグローバル生産台数は、前年同期比5.7%増の167万6182台と4年連続で増加。日産自動車を約6万2000台上回り、ホンダに次ぐ3位につけた。同社生産の6割を占めるインドが、市場での旺盛な需要に対して、半導体の供給改善やSUVの新型車を積極投入。加えてマネサール工場で4月から新ラインの稼働を開始し能力増強したこともあり、同8.6%増と4年連続で増加。上期として過去最高を更新した。

 ただ、インド以外の海外生産は前年同期比28.7%減と低迷。これはパキスタンで外貨流出阻止のために政府やパキスタン中央銀行が2022年末に導入した輸入規制で部品確保が困難となった影響が続いた他、タイが経済低迷により大きく台数を減らした。それでもインドの好調により、海外生産トータルでは同3.4%増の115万7050台と2年ぶりに増加した。

 なお、スズキは6月、タイでの四輪車生産から撤退すると発表した。小型車需要の伸び悩みや、バーツ高により輸出向け製品の採算性が悪化したことが要因で、2025年末までにラヨーン県にある工場を閉鎖する。タイでは「スイフト」「シアズ」「セレリオ」を生産しており、タイ国内向け以外に、フィリピンやベトナム、中南米などにも輸出していた。

 国内生産も好調で、前年同期比11.0%増の51万9132台と2年連続のプラス。上期の国内生産では唯一の2桁%増となった。スイフトや「スペーシア」など新型車が好調だった他、前年に半導体不足で稼働停止を実施した反動などが表れた。輸出が同11.5%増と好調だったことも国内生産を押し上げた。

 好調なスズキも6月は減少に転じた。6月のグローバル生産台数は、前年同月比3.9%減の23万4830台と6カ月ぶりにマイナスへ転じた。要因は海外生産で、インドでは稼働日が少なかったため同2.9%減と6カ月ぶりに減少した。さらにハンガリーで前年に実施した増産の反動が発生するなど、インド以外の海外も同38.8%減と大幅に減らし16カ月連続のマイナス。海外生産トータルでは同8.8%減の14万9506台と6カ月ぶりに前年実績を下回った。

 一方、国内生産は半導体不足の改善や、前年に実施した稼働停止の反動、新型車の投入効果などにより、前年同月比6.1%増の8万5324台と5カ月連続のプラス。輸出も新型スイフトやパキスタン向けCKD(セミノックダウン)の増加などにより、同16.4%増と3カ月連続で増加した。

日産自動車

 日産の2024年上期のグローバル生産台数は、前年同期比4.4%減の161万4112台と2年ぶりに前年実績を下回った。8社の順位では好調なスズキに越されて4位に転落した。このうち国内生産は、同4.4%減の32万8192台で2年ぶりのマイナス。国内最量販車種「ノート」の販売が落ち込んだ他、輸出向け「ローグ スポーツ」などが低迷。輸出も同0.2%減と伸び悩み、2年ぶりに減少した。

 海外生産も、前年同期比4.4%減の128万5920台と3年連続の前年割れだった。北米では、「セントラ」「ヴァーサ」が増えたメキシコは同12.1%増と好調だったものの、米国は「アルティマ」が落ち込み同4.1%減と伸び悩んだ。英国は同0.6%増と前年並みで4年連続プラスだった。一方、低迷したのは主力市場の中国で、市場のEVシフトやそれに伴う競争激化などにより、同8.1%減と3年連続のマイナス。ただ、落ち込み幅はトヨタやホンダに比べると1桁%減にとどめた。これは前年が、直列3気筒1.5リットルターボエンジンを新たに搭載した新型「エクストレイル」が不評だったことも一因となっている。

 足元の状況は厳しさを増している。6月単月のグローバル生産は、前年同月比16.3%減の24万6411台と3カ月ぶりに前年実績を下回った。このうち海外生産は同15.8%減の19万5358台と3カ月ぶりのマイナスだった。中国は、同14.8%減と3カ月ぶりに減少。トヨタやホンダと比較しても減少幅は小さいといえる。英国は「リーフ」の生産終了もあり、同8.7%減と振るわず、3カ月ぶりに減少した。

 それ以上に深刻なのが北米事業だ。メキシコは前年同月比0.3%増と3カ月連続で増加したが、米国はアルティマの減少により同27.1%減と大きく落ち込み、2カ月連続のマイナスだった。加えて年初まで好調だった国内生産が急減しており、同18.2%減の5万1053台と4カ月連続で減少した。その理由が米国での販売低迷で、米国で人気のHEVをラインアップしていないことが響いており、主力モデルのエクストレイル/ローグを減産。輸出も同15.5%減と大きく減少した。

 なお、日産は2024年4〜6月期決算で、営業利益が前年同期比99.2%減の9億9500万円と大幅減益を記録した。これは北米が、販売低迷により在庫やインセンティブ(販売奨励金)の増加により赤字に転落したことが要因となった。日産は米国事業のテコ入れとして、新型車やプラグインハイブリッド車(PHEV)の投入で挽回を目指す考えだが、米国市場の減速感も懸念されるなど、先行きは不透明と言わざるを得ない状況だ。

マツダ

 マツダの2024年上期のグローバル生産台数は、前年同期比2.9%減の59万1988台と2年ぶりに減少した。このうち世界生産の3分の2程度を占める国内生産は、同11.4%減の36万8528台と2年ぶりのマイナス。「ラージ商品群」など新型車への切り替えに伴う生産調整の他、「CX-8」や「CX-9」などSUVモデルの生産を終了したことなどが響いた。車種別では主力モデルの「CX-5」が同7.4%減、「マツダ3」に至っては同14.0%減と大幅減となった。

 一方、海外生産は好調で、前年同期比15.1%増の22万3460台と2年連続のプラス。北米は、メキシコは前年並みとなったが、米国工場は2直化したことで同103.1%増と倍増した結果、北米トータルでは同20.3%増となった。

 中国は、一汽乗用車での「マツダ6」と「CX-4」の生産委託を2023年4月に終了したが、新たに生産を開始した「CX-50」の純増や、マツダ3やCX-5も増加したことで、中国生産は前年同期比30.9%増と、中国生産の日系メーカーの中で唯一のプラスとなった。一方、タイは現地の経済低迷による需要減に合わせて「マツダ2」やCX-30の生産調整を実施したこともあり、同16.2%減と低迷している。

 6月単月のグローバル生産台数は、前年同月比3.9%増の10万2788台と2カ月連続で増加。8社の中で最も高い伸びを示した。国内生産は、生産終了したCX-8の反動やCX-5の減少の他、型式認証の不正により6月6日から生産を停止した「ロードスターRF」とマツダ2の影響などにより、同2.9%減の6万6543台と2カ月ぶりのマイナスだった。

 好調な海外生産は、前年同月比19.0%増の3万6245台と3カ月連続で増加。8社の6月単月の海外生産で最も伸長した。このうち北米は、メキシコがマツダ3やCX-30の減少により同5.8%減にとどまったが、米国は同92.8%増と伸長した。中国も同39.8%増と好調な他、長らく低迷していたタイもマツダ2やCX-3の増加で同14.1%増と2カ月連続で増加した。

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