イチから全部作ってみよう(11)たこ焼き屋模擬店の要求仕様書を抜け漏れなく作る:山浦恒央の“くみこみ”な話(180)(2/3 ページ)
ECサイトを題材にソフトウェア開発の全工程を学ぶ新シリーズ「イチから全部作ってみよう」がスタート。シリーズ第11回は、前回「機能分割」を用いて作成したたこ焼き屋の模擬店をの要求仕様書を抜け漏れのないようにブラッシュアップする。
4.今回のお題の説明
今回のお題の説明を下記に示します。
お題
くみこみ高校野球部は、1カ月後の文化祭の出し物として、たこ焼き屋の模擬店を出店することになった。そこで、部長の山田君は、部員のために役割分担を決めた要求仕様書を作成した。第1バージョンの要求仕様書が完成し、係の分担は良いと思ったが、不測の事態に備えた考察がないと感じた。そこで、作成した要求仕様をブラッシュアップする。
ゴール:抜け漏れのない要求仕様書を作成するイメージをつかむ!
- 作成のヒント
- (1)大前提:相手が「コンピュータが化けた部員だった。従って、細かく指示しないと何もできない」という想定で考える
- (2)曖昧な箇所はないか
- (3)仕様に書いてない不測の事象が発生しないか考察する(例:天候不順など)
- (4)本来必要な係や作業が抜けていないか考察する(例:PR係などが必要か)
- (5)なお、上記を全て考えると終わらなくなるので大まかなポイントだけでよい
成果物:修正したたこ焼き模擬店の要求仕様書
5.たこ焼き出店における役割分担(改訂版の要求仕様書:赤字が改訂箇所)
5.1 目的
文化祭の出し物として、たこ焼き屋の模擬店を出店し、学外の人にくみこみ高校の良さを知ってもらう。
5.2 模擬店の役割分担図
下記に模擬店の役割分担を示す(図2)。
5.3 たこ焼き屋の出店
たこ焼き屋が正常に機能するように各係に指示する。コントロールする。また、「たこ焼き屋の出店」の統括役は、部長の山田君が担当する。
5.4 運営管理係
たこ焼き屋の出店に必要な調整や指示などの運営業務を行う。
5.4.1 天候不順や異常事態が発生した場合の開催連絡
天候不順や異常事態発生時は、朝6時までに部員に連絡をする。連絡がない場合は、通常通り開催とする。
5.4.2 文化祭委員との調整
文化祭委員と定期的なミーティングを行って出店場所を確保し、詳細を部員たちに伝達する。
5.4.3 スケジュールの作成
出店期間に応じて、各部員のシフトや休憩時間などをまとめたスケジュールを作成する。作成したスケジュールはプリントして、部員に提示する。
欠員が出た場合、代われる部員がいればアサインする。欠員を補充できない場合、その状態で出店できるかチェックし、出店できなければ、たこ焼き屋は中止とする。
5.5 設営係
たこ焼き屋出店に必要な機材を準備する。機材が確保できない場合、出店を中止する。
5.5.1 場所確保
他の部と調整し、校舎内で確保した出店場所のレイアウトを作成する。場所を確保できない場合、出店を中止する。
5.5.2 機材確保
たこ焼きを作成するための機材を確保する。
以下は必須で、なければ出店を中止する。
- たこ焼き器(カセットコンロ)
- 調理器具(ボウル)
- 箸、提供用のトレイ
- 冷蔵庫
- 電源
以下がない場合、代替品を使う。
- 袋
- 雑巾、クッキングペーパー
- 竹串
- ごみ箱
- 延長コード
- 食毒液
- ヘラ
- 計量カップ
- まな板
- 包丁
- お玉
5.5.3 安全管理
消火器、消火用の水を確保する。火傷用の軟膏を用意する。
5.6 食材準備係
たこ焼き屋の出店に必要な食材を確保する。
5.6.1 食材の選定
たこ焼きに必要な食材を選定する。食材候補を表1に示す。「必須」の食材を確保できない場合、出店を中止する。
食材 | 必要量 |
---|---|
たこ(必須) | 3kg |
たこ焼き粉(必須) | 5kg |
水(必須) | 10リットル(学校で用意) |
卵 | 200個 |
サラダ油(必須) | 1ボトル(1リットル) |
たこ焼きソース(必須) | 10ボトル |
青のり | 12パック |
かつお節 | 60パック |
マヨネーズ | 4ボトル |
表1 たこ焼き模擬店の食材候補 |
5.6.2 食材の調達/管理
選定した食材を調達する。調達した食材は、冷蔵庫に入れ、衛生面を確保する。確保できない場合は出店を中止する。
5.7 料理係
たこ焼き作成作業を行う。
5.7.1 たこ焼き作成
たこ焼きの調理法の手順書を作成する。
(1)準備
- たこ焼き粉を1kg、ボウルに入れ、水を少しずつ加えながら(水の総量は2リットル)、よく混ぜる
- 卵を4個加え、さらによく混ぜる(120秒)
(2)たこ焼きの準備
- たこ焼き器をあらかじめ60℃に熱する
- 温まったら、各穴にサラダ油を適量(1cc)塗る
(3)生地を流し込む
- たこ焼き器の各穴に生地を流し込む(穴から5〜10ccあふれる程度)
- たこを1つの穴に対し1個入れる
(4)焼く
- 3分30秒経過したら、竹串やピックで周囲の生地を持ち上げ、90度回転する
- これを5回繰り返し、全体が均一に焼けるように丸いたこ焼きを作成する
(5)仕上げ
- たこ焼きが黄金色に焼けたらプレートに取り出し、たこ焼きソース(1個につき2cc)、青のり(1個につき0.1g)、かつお節(1個につき0.1g)、マヨネーズ(1個につき1g)をかけて完成となる
(6)チェック
- 正常に焼けなかった場合は、廃棄する
5.7.2 試食会の実施
試食会を行い、提供するたこ焼きを決定する。
5.8 会計係
たこ焼き屋の出店に必要なお金の管理を行う。
5.8.1 お金の管理
各係からお金の依頼が来た場合は、手配する。その際は、ノートに記載し管理できるようにする。お金が足りない場合は、釣銭として準備したお金から供出する。
5.8.2 領収書の回収
支出したお金の領収書をまとめる。領収書がない場合は、自腹になることをきちんと周知する。
5.8.3 代金の徴収
お客からたこ焼きの料金を徴収し、必要であればお釣りを渡す。釣銭切れを起こさないように8万円分の1000円札、3万円分の100円玉を準備する。
5.8.4 会計報告
文化祭終了時に、収入、支出、レシートをまとめて会計報告を文化委員に行う。
5.9 PR係
たこ焼き屋のPRを行い、集客業務を行う。
5.9.1 メニュー表・看板の作成
提供するたこ焼きの価格をまとめたメニュー表、看板を記述する。
5.9.2 集客
学校内を回り、たこ焼き屋の場所とPRを行う。
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