日産が挑む真夏の車内温度上昇を防ぐ塗料、外部表面で最大12℃の温度低下:材料技術(1/3 ページ)
日産自動車は、夏場の直射日光による車室内温度の過度な上昇を防ぐことで、エアコン使用時のエネルギー消費を減らし、燃費と電費の向上に貢献する自動車用自己放射冷却塗料の実証実験の途中経過について紹介した。
日産自動車(日産)は2024年8月6日、東京都内で記者会見を開き、夏場の直射日光による車室内温度の過度な上昇を防ぐことで、エアコン使用時のエネルギー消費を減らし、燃費と電費の向上に貢献する自動車用自己放射冷却塗料の実証実験の途中経過について紹介した。
開発の経緯と実証実験の成果
同社はこれまで、カーボンニュートラルの実現に向けて電動化をはじめ、自動車の電動化をはじめ、さまざまな取り組みを推進してきた。カーボンニュートラルの実現では、自動車の使用時におけるエネルギー消費を抑制する取り組みが必要だ。
そこで同社は2018年に、放射冷却素材「Radi-Cool(ラディクール)」を開発したラディ クール ジャパンと自己放射冷却製品に関する共同開発の可能性を探り、2019年には両社でRadi-Coolを用いて開発したフィルム形態の自己放射冷却製品の冷却効果を確認した。
さらに、自動車への適用性を考慮し、両社は2021年10月には自動車用自己放射冷却塗料の共同開発契約を締結し、開発をスタートした。2022年には自動車に厚膜で自己放射冷却塗料を塗装し冷却効果を確かめた。
2023年11月には、ラディクール ジャパンの販売代理店を務める日本空港ビルデングの協力により、ANAエアポートサービスが空港で日常的に使用している車両「NV100クリッパーバン」に自動車用自己放射冷却塗料を塗装し、性能を検証する実証実験をスタートした。この実証実験では、「温熱の評価」「自動車用としての耐久性を評価」「日産のクリアコートを上から塗装しても、温熱/塗膜が変化しないかの検証」を目的に、自動車用自己放射冷却塗料を塗装したNV100クリッパーバンの車体温度などを通常の塗装車と比べている。実証実験の期間は2023年11月〜2024年11月となる。
実証実験により同社は既に、自動車用自己放射冷却塗料を塗装したNV100クリッパーバンは、通常の塗装車と比較して、外部表面で最大12℃、運転席頭部空間では最大5℃の温度低下を確認した。これにより、炎天下に長時間駐車していた車両への乗り込み時の不快感を軽減し、エアコンの設定温度や風量を最適化しやすくなり、燃費や電費の向上を図れることが分かった。加えて、塗装の欠けや剥がれ、傷、塩害などの化学反応に対する耐性、色の一貫性、修復性にも現時点で問題ないことも判明した。
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