広がる「新幹線物流」の可能性 潜在需要と拡大に向けた課題とは:物流のスマート化(1/2 ページ)
野村総合研究所は新幹線を活用した速達輸送「新幹線物流」に関する調査結果をまとめ、それを基にしたメディア向け報告会を開催した。
野村総合研究所(NRI)は2024年7月4日、新幹線を活用した速達輸送「新幹線物流」に関する調査結果をまとめ、それを基にしたメディア向け報告会を開催した。新幹線物流の事業についての現状と課題についてレポートした。
3割以上の空きスペースを有効活用
近年、物流業界では、新幹線による荷物輸送の事業展開に注目が集まっている。2024年6月時点では鉄道各社のうち、北海道旅客鉄道(JR北海道)と東日本旅客鉄道(JR東日本)、東海旅客鉄道(JR東海)、九州旅客鉄道(JR九州)が新幹線を使った小口荷物輸送サービスを展開している。大量輸送の実証実験もJR九州やJR東日本で実施されている。また、同年5月にはJRグループ6社が連携して、全国各地の特産品を東京駅に輸送して販売する取り組みも行われた。
いわゆる物流2024年問題によって、陸上輸送ではトラックドライバーの人数不足が将来にわたって続くと見られている。航空機による航空輸送においても、国内線の出発回数自体はコロナ禍前の水準にまで回復したものの、貨物積載可能重量は同比約80%にとどまり、輸送サービスが輸送需要に十分に応えることが困難な状況がある。さらに物流業界ではCO2排出量の削減も課題になっており、特に排出量が多い自動車から鉄道など他の輸送手段へのモーダルシフトが求められている。
こうした中で、注目が集まっているのが新幹線の空きスペースの活用だ。例えば、東海道新幹線の平均座席利用率はコロナ禍前に最も高かった2018年度で66.4%程度となっている。つまり、3割以上の座席は空きスペース化しており、これらの空間を物流用途で有効に活用できる可能性がある。新幹線は大都市圏や人口密集地を結んでおり、物流網の重要な構成要素としての役割が期待できる。
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