進化する「ゲームのボタン」 ユーザーの思いをくむ老舗パーツメーカーの開発舞台裏:ワクワクを原動力に! ものづくりなヒト探訪記(15)(4/5 ページ)
本連載では、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。今回は東京都板橋区にあるゲームパーツメーカー老舗の三和電子で、数々のヒット商品を生み出してきたパーツ開発部門の斉藤邦男さんと、鵜木智之さんを取材しました。
家庭用の需要が拡大、ゲームボタンの現在
――では、現在イチオシのボタンには、どんなものがあるでしょうか?
鵜木さん 最近ですと、静音ボタンがイチオシです。名前の通り、ボタンを押したときの音が静かなボタンですね。今後、静音レバーとともに「静音シリーズ」として売り出していきたいと考えています。
――「静音シリーズ」の開発に至った経緯を教えていただけますか?
斉藤さん 当社は業務用のパーツ開発を主体としてきましたが、近年はコントローラーのカスタマイズが一般的になってきたこともあり、家庭用のパーツ需要が拡大しています。すると、ゲームセンターでは気にならなかった、「ボタンを押す音」の問題が出てきました。ゲームセンターではパチパチという音が心地よかったのに、家でやるとちょっとうるさいかなという……(笑)
鵜木さん 私も家でガチャガチャと音を鳴らして、家族に怒られました(笑)。
斉藤さん そうでしょう(笑)。ですから、家庭用のパーツを開発するにあたり、きっと静音パーツの需要があると思ったのです。ボタンだけでなくレバーなども含め、今後、静音シリーズを拡張していく方向です。
鵜木さん 少しずつ実績を積んで、いろいろな形のボタンに静音モデルを投入していきたいですね。現在は照光式ボタンの静音モデルを開発中です。こちらも楽しみにしていてください。
――照光式ボタンの静音モデルとは、どのようなものでしょうか?
鵜木さん はい、音楽に合わせてボタンをたたく、リズムアクションゲーム(音ゲー)用のボタンです。秋葉原のゲームセンター「Hey」さんでロケテスト(※3)を行い、多くの方に意見をいただきました。現在、発売に向けて調整を行っています。
※3 「ロケーションテスト」のこと。実際にゲームセンターなどに設置して、市場調査や製品テストなどを行う。
――以前、東京ゲームショウにも出展されていたボタンですね。私もロケテストでプレーしましたが、キビキビと反応が良く、打鍵音も心地よいボタンであると感じました。
鵜木さん ロケテスト時は、バネ、スイッチともに50グラムという、メーカー純正筐体と同じ組み合わせで構成しました。打鍵音が抑えられるのはもちろんですが、実は、ボタンも反応しやすいように調整し、端の方を押してもしっかり入力されるようにしました。どこを押しても同じように反応するので、もしかしたらミスタッチが減って、スコアが伸びやすくなっているかもしれませんね。
――それはうれしい効果ですね! この静音ボタンはゲームセンターでロケテストをされたとのことですが、家庭用のボタンとして開発されたものではないのでしょうか?
鵜木さん いえ、こちらのボタンも家庭用のパーツとして開発しています。今回は市場調査の一環としてたくさんのユーザーに触っていただきたいという思いがあり、Heyさんにお願いしてゲームセンターでのロケテストを行いました。
――「ユーザーの意見を製品に取り入れる」という言葉は、このインタビューの中で何度も聞かれました。三和電子さんがいかにユーザーの声に耳を傾けているか、熱量が伝わってきたような気がします。
筆者がロケテストでプレーした際のXへのポスト
こちらは、1月に行われたロケテストの模様。多くのプレーヤーが静音ボタンでのプレーを楽しみました! アンケートで意見や感想を集めており、さらに使いやすいボタンになること間違いなしです。先日、三和電子さんのビートマニア用静音ボタンロケテに行ってきました。
— かず。@MONO (@KazKIDakaAOI1) February 9, 2024
このゲームはプレー中にヘッドホンをつけていることが多く、自らの打鍵音でリズムを取るプレーヤーもいることから「静音」がどこまで効果的なのか興味津々でしたが…とにかく押し心地が良く、「光る(反応◎)」ボタンでした! pic.twitter.com/vyXcj8sfJq
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