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進化する「ゲームのボタン」 ユーザーの思いをくむ老舗パーツメーカーの開発舞台裏ワクワクを原動力に! ものづくりなヒト探訪記(15)(2/5 ページ)

本連載では、新しい領域にチャレンジする中小製造業の“いま”を紹介していきます。今回は東京都板橋区にあるゲームパーツメーカー老舗の三和電子で、数々のヒット商品を生み出してきたパーツ開発部門の斉藤邦男さんと、鵜木智之さんを取材しました。

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今日からあなたもゲーム通!? 三和電子の基礎知識

 今回話を聞いたのは、三和電子開発部の斉藤邦男(さいとう くにお)さんと、鵜木智之(うのき ともゆき)さんです。2人は三和電子のパーツ開発部門の担当で、これまでにゲーム用レバーやボタンなど、数々のヒット商品を生み出してきました。まずは、三和電子がどんな会社か教えてもらいましょう。

――早速ですが、三和電子ではどんなモノを製造、販売しているのか教えていただけますか?

斉藤邦男(さいとうくにお)さん。三和電子 生産部技術課長。埼玉県出身。主にパーツの開発、設計を担当している。ゲームはもちろん、カメラや写真にも造詣が深い
斉藤邦男(さいとうくにお)さん。三和電子 生産部技術課長。埼玉県出身。主にパーツの開発、設計を担当している。ゲームはもちろん、カメラや写真にも造詣が深い 出所:ものづくり新聞

斉藤さん はい、当社では主に業務用ゲーム機の操作用部品、例えばゲームのコントローラーに使うレバーや押しボタンを製造、販売しています。また、それらのパーツをコントロールパネルにつなげるためのハーネス(ケーブル)など、周辺機器やアクセサリーも作っています。

――ゲーム機のコントローラーというと、レバーやボタンが一体になったものが思い浮かびますが、そこに使われているレバーやボタンを単体で開発されているということでしょうか。

斉藤さん そうです。業務用ゲーム機は手荒に扱われることもあり、故障や不具合はつきものです。一部のパーツが故障した時に、ゲーム機の稼働を止めて修理に出していては、時間と手間がかかってしまいます。パーツ単位でのメンテナンス性は非常に重要です。近年は個人単位でコントローラーをカスタマイズする需要が高まっていることもあり、そういった意味でもパーツに絞った開発にはメリットがあると考えています。

三和電子で作られているボタンの一例。おなじみの丸いボタンだけでなく、いろいろな形のものがあります!
三和電子で作られているボタンの一例。おなじみの丸いボタンだけでなく、いろいろな形のものがあります! 出所:ものづくり新聞

――開発されているのは主に業務用ゲームのボタンというお話でしたが、なぜ、一般的なボタンではなく、ゲーム専用のボタンを開発することになったのでしょうか。

斉藤さん 当社の創業者は、かつてゲームセンターを経営していました。当時はゲーム機器のメーカーが操作部品も作っており、故障するたびにメーカーで修理しなければなりませんでした。そこで「パーツメーカーがないのであれば自分たちで作ってしまえ!」と考えたのが始まりだと聞いています。

――次に、ゲームボタンの特徴について教えてください。ゲームボタンとは、一般的な家電製品などに使われているボタンと比較してどのような違いがあるのでしょうか?

斉藤さん 信号をオン/オフするためのスイッチという意味では、一般的に使われているボタンとさほど違いはありません。しかし、ゲームに使われるボタンは、押される回数が非常に多いです。言葉は悪いですが「荒い使われ方」をすることも少なくありません。そのため、ハードな操作にも対応できる耐久性は、最優先で考えなければいけないポイントといえるでしょう。

 多くのユーザーがボタンを使用するゲームセンターやアミューズメント施設では、故障や劣化などが起きやすいと想定されます。部品単位で交換できるメンテナンス性が重要です。

――確かに、ゲームのボタンは何百回、何千回と押されることがありますよね。耐久性に優れたパーツであるのも納得できます。他にゲームボタンならではの特徴などはありますか?

斉藤さん 当社でも開発している照光式ボタンのように、さまざまなランプやスイッチの種類を組み合わせてバリエーションを増やせるという発展性です。さらに、ゲームセンターやアミューズメント施設で見栄えがするよう、カラフルだったり、デザインやプリントが凝っている種類もあります。

照光式ボタン、簡単に言うと「光るボタン」です。ひときわ目を引くデザインで、なんだか楽しい気分になってきますね! 大きなボタンは、ゲーム機だけでなくバラエティ番組などで使われることもあるとか
照光式ボタン、簡単に言うと「光るボタン」です。ひときわ目を引くデザインで、なんだか楽しい気分になってきますね! 大きなボタンは、ゲーム機だけでなくバラエティ番組などで使われることもあるとか 出所:ものづくり新聞

――言われてみれば、家電製品でカラフルなボタンはあまり見ません。子供の頃、ゲーム機のピカピカ光るボタンを見て、ワクワクしていたのを思い出しました。

斉藤さん そうなんです。先代の社長はいつも「未来のゲームセンターを想像したら、そこはどんな場所になっているだろう?」と考えていたようです。当社の創業当時、1980年頃のゲームセンターといえば、店内は真っ暗で、ちょっと不良のたまり場的なイメージがありまして……。

――イメージはあまり良くありませんでしたよね。

斉藤さん しかし先代は、「未来のゲームセンターは、まるで遊園地のようにもっと明るく楽しい場所になっていくだろう」と予測していました。そしてわれわれはその考えのもと、押すだけでなく、見ているだけでも楽しい気持ちになれるようなボタンを開発してきました。カラフルに光る照光式ボタンなどは、その思想に色濃く影響を受けた製品であると思います。

――先代の社長がおっしゃっていたように、現在のゲームセンターやアミューズメント施設は、明るく楽しい場所になっていると思います。夢のあるお話をありがとうございます。

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