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超臨界流体技術の進展がリチウムイオン電池リサイクル工業化の決め手になるLIBリサイクルの水熱有機酸浸出プロセス開発の取り組み(4)(3/4 ページ)

本連載では東北大学大学院 工学研究科附属 超臨界溶媒工学研究センターに属する研究グループが開発を進める「リチウムイオン電池リサイクル技術の水熱有機酸浸出プロセス」を紹介する。第4回では「JST未来創造事業の実施内容」を取り上げる。

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2 研究の成果

2-1 水熱酸浸出

 著者の研究グループでは、三元系リチウムイオン電池の正極材料を対象とした電池材料のリサイクル技術に関して、金属回収/単離プロセスの開発にめどをつけるために、使用済みリチウムイオン電池の回収方法、各種処理、電池製造ラインへの組み込みなどを含む全体を設計するためのガイドラインの策定も検討した。

 ガイドライン策定の目的は、水熱クエン酸浸出により三元系正極材料を構成するイオンを全て水溶液中に回収した上で、後段の単離プロセスで高効率に分離できるかを見極めることにある。なお、独自の試算によれば、薬剤使用量の低減と処理速度の向上により従来の方法と比べて水熱クエン酸浸出はコストが減らせると判明している。

 これらの研究については、基礎試験とラボスケールプラントでの実証を行った。具体的には、当該プロセスのコアとなる水熱酸浸出技術と金属錯体を用いた超臨界二酸化炭素による分離濃縮技術について、メカニズム解明や速度論解析を行い、ラボスケールプラントを設計した。続いて、水熱酸浸出と超臨界二酸化炭素単離それぞれのラボスケールプラントを制作し、これらの実証を行った。回収できる金属それぞれの組成/純度を確認し、その電池材料としての利用可能性についても検討した。

 一方、水熱酸浸出については、三元系リチウムイオン正極材料を対象に、水熱酸浸出でマンガン析出を併発させつつ、リチウム、コバルト、ニッケルを水溶液中に溶解させて回収し、錯体を形成しているコバルトを超臨界二酸化炭素で単離させるプロセスを検討した。特にコバルトについては反応および抽出メカニズムを特に注力して解明し、マンガン析出メカニズムおよび析出条件の検討も行った。

 その結果、市販の各種正極材料における水熱酸浸出のメカニズム検討と速度論解析により、反応器の設計指針を確立した。また、工程不良品から取り出した三元系正極材料に水熱酸浸出を実施し、市販品と同様の速度で浸出することも確かめた。

 上記の反応器設計指針に基づき、ラボスケールの連続装置を設計/製作し、市販品と工程不良破砕品に水熱酸浸出を行った結果、いずれも良好に金属イオンを回収できることが明らかになった。

 マンガンはクエン酸錯体として析出させることも可能であり、著者の研究グループではその析出条件の検討を実施し、温度、濃度、水素イオン濃度(pH)に依存することを発見した。【参考文献3、5】

 また、名古屋大学の後藤教授の研究チームに検討いただいた、超臨界二酸化炭素を用いた金属単離では、水熱酸浸出させた溶液からニッケルとコバルトを超臨界二酸化炭素で抽出できることを発見するとともに、その溶解性はコバルトよりニッケルにほうが高いことを明らかにした。連続的に超臨界二酸化炭素によりコバルトおよびニッケルそれぞれを濃縮単離させるべく、向流接触型の連続抽出プロセスで検討したところ、コバルトの抽出選択率がニッケルよりもわずかに高いことが分かった。このプロセスを最適化するために、水溶液のpH調整や、抽出条件(温度、圧力、配位子選択など)を引き続き検討する必要がある。

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