富士キメラ総研は2024年2月16日、車載電装システムのグローバル市場調査の結果を発表した。車載電装システム全般の市場規模は、2035年に2022年比2.4倍の95兆8888億円に拡大すると見込む。電動化やADAS(先進運転支援システム)、自動運転技術の普及が市場をけん引する。また、コネクテッドサービスの広がりにより、デジタルキーシステムの市場も急拡大する。
電動化に関して、2035年の駆動用モーターの市場規模は2022年比4.6倍の2兆7384億円と見込む。電動車の普及に伴う長期的な需要増加や、全輪駆動(AWD)システムの採用拡大、出力向上による製品単価の上昇が寄与する。
また、電動オイルポンプや電動ウオーターポンプ、電動パワーステアリング、冷却ファン、電動パーキングブレーキ、スタータージェネレーターなどの補機類も2035年に同2.1倍の7200億円に拡大する見通しだ。その他の電動化関連デバイスは、大容量化や高出力化が進むバッテリー、インバーターやオンボードチャージャーなどで大幅に伸長する。
ADASや自動運転技術の普及に伴い、センサーモジュールやアクチュエーターモジュールの2035年の市場規模は2022年比4.0倍の7兆2702億円に増加する。衝突被害軽減ブレーキの搭載義務化も市場成長を後押しする。LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)は中国向けの一部の高級車や、複数個を搭載するモデルの登場により、伸長している。当面は高級な乗用車やMaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)向けの車両で搭載が進むという。
スマートフォンを介して車両の施錠や解錠、起動を行うデジタルキーシステムは、コネクテッドサービスの拡大や認知度向上により普及が進み、2035年には新車の2割に採用されると予想する。セルラー通信でクラウド経由で作動するタイプやBLE(Bluetooth Low Energy)が現在は主流だが、今後はUWB(超広帯域無線通信)の拡大を見込む。
この他、情報系ではテレマティクスユニットや電子ルームミラーが足元の電装システムの需要をけん引しており、電子サイドミラーや車内モニタリングシステムも今後搭載が増える見通しだ。
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