AUTOSARの最新リリース「R23-11」(その1)+SDVに取り組むための心構え:AUTOSARを使いこなす(31)(2/5 ページ)
車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載第31回は、日本におけるAUTOSARの活動状況を報告するとともに、最新改訂版の「AUTOSAR R23-11」を紹介する。加えて、自動車業界で注目を集める「SDV」にどのように取り組むべきかについて論じる。
2.AUTOSAR R23-11リリース内容およびリリースイベントのご紹介
2023年11月23日に、AUTOSARの最新改訂版である「AUTOSAR R23-11」(Internal Release Number:R4.9.0)が予定通りリリースされました。一般の方(AUTOSAR partnerではない方)が閲覧できるようになったのは約1週間遅れての同年11月29日ですが、現在はAUTOSAR公式Webサイトで公開されています※4)。
※4)2022年末からのAUTOSAR公式Webサイトの大幅更新に伴い、商用利用にはAUTOSARパートナーとなる必要があることなどが明記されたFAQが消えてしまっています。
また、Standardsのページでは、Classic Platform(CP)ではR4.4.0よりも前(R4.3.1以前)のダウンロードができませんし、Adaptive Platform(AP)では各Function Clusterグループ(例:Safety)をクリックしても、そのグループに含まれる文書の一覧が出ず、通常の操作ではR19-11よりも前(R18-10以前)のダウンロードができません。Foundation(FO)でもAPと同様です。MCALなどを中心に、CPのR4.0.2, R4.0.3およびR4.2.2はまだ使用されているケースがありますので、不便が続きます。
なお、AUTOSAR公式Webサイトでは、各minor releaseのうち、最新Revision(CP R4.0.3、R4.1.3、R4.2.2、R4.3.1およびそれ以降)のみダウンロード可能で、最新ではないRevision(CP R4.0.1、R4.0.2、R4.1.1、R4.1.2、R4.2.1、R4.3.0)については、以前もダウンロードはできませんでした(AUTOSARパートナーであれば別途会員専用リポジトリからダウンロード可能)。
本リリースの扱いは、前回同様、これまでのAUTOSAR CP R4.x系の「minor release」です。R4.0.1のリリースが2009年末ですから、実はもう2024年末には15周年を迎えることになりますね。
6つの新規コンセプトの導入と5つの継続コンセプトでの変更およびさまざまな機能拡張が行われています(図3、表1)。いずれもValidation作業は完了しておりませんので、draft扱いであり、今後のValidation作業の中で問題が見つかれば、当然見直しが入ることとなります。
No. | Title / Summary | FO | CP | AP | 補足 | Status |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | Tracing for Adaptive Platform | x | - | x | 機能拡張 | draft |
2 | Secure SOME/IP-ACL | x | x | - | 機能拡張 | draft |
3 | Firewall in Classic AUTOSAR | x | x | - | 機能拡張(続編) | draft |
4 | Service Oriented Vehicle Diagnostics (SOVD) | x | - | x | 機能拡張(続編) | draft |
5 | Deterministic Communication with TSN | x | x | - | 機能拡張(続編) | draft |
6 | Time Validation | x | x | - | 機能拡張 | draft |
7 | Charging Interface | - | x | - | 機能拡張 | draft |
8 | DDS Support on CP | - | x | - | 機能拡張(続編) | draft |
9 | Service Discovery Control for Application Software | - | x | - | 機能拡張 | draft |
10 | MACsec | - | - | x | 機能拡張(続編) | draft |
11 | Safe API for Hardware Accelerators | - | - | x | 機能拡張 | draft |
表1 AUTOSAR R23-11での新規/継続コンセプト一覧(xは影響を受けるプラットフォーム) |
また、今回もリリースイベントが2023年12月7日、日本時間では夕方17時開始と深夜24時開始の2回、同一内容のセッションとして、今回も参加費無料で開催されました。筆者も2回目に参加しました。
参加できなかった方でご興味ございましたら、AUTOSAR公式WebサイトのNews & Eventsのページから「AUTOSAR Release Event R23-11」をたどっていただきますと、イベントでの講演内容を収録した公開動画を視聴することができます。
なお、表や文中に登場するプラットフォーム略称は以下の通りです。
- [FO]:AUTOSAR Foundation
- [CP]:AUTOSAR Classic Platform
- [AP]:AUTOSAR Adaptive Platform
CPではBSW(Basic Software)の追加変更も行われています(表2)※5)。
※5)これらのR23-11の変更内容は、筆者が講師をつとめております「AUTOSAR Classic Platform (CP) 入門トレーニング」でも早速反映を進めています。
次ページから各コンセプトのご紹介に入ります。これらは、イーソルで提供している変化点調査報告のごく一部の抜粋ですが、リリースイベントでの解説内容よりも細かい部分もございます。今回は、11のコンセプト(6つの新規コンセプトの5つの継続コンセプト)の中から4つをご紹介いたします。
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