日本の労働生産性は昔から低水準だった! 統計データの国際比較で見えたこと:小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(19)(1/2 ページ)
ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は「労働生産性」に注目します。
今回は、昨今よく耳にする労働生産性(Labor Productivity)についてご紹介します。参照するのはOECDの労働生産性に関する統計データ(Level of GDP per capita and productivity)です。
生産性とは投入量に対する産出量の割合を意味するもので、幅広い領域で生産効率を表す言葉として広まっています。その中でも労働生産性は、労働者によって生み出された付加価値の効率を表す指標です。
「日本は生産性が低い」などとも言われますが、その実力値はどの程度のものなのか。確認してみましょう。
労働生産性を示す2つの指標
OECDでは労働生産性の指標として、次の2つを公表しています。それぞれの計算式も紹介しましょう。
- 労働者1人当たりGDP(GDP per person employed)
- 労働者1人当たりGDP=GDP÷労働者数
- 労働時間当たりGDP(GDP per hour worked)
- 労働時間当たりGDP=GDP÷総労働時間
=GDP÷労働者数÷平均労働時間
- 労働時間当たりGDP=GDP÷総労働時間
GDPは産出された付加価値の合計値です。労働者(Employment)は、企業に雇われている雇用者(Employees)と、個人事業主(Self-employed)の合計人数で、日本の統計データでいうところの就業者数に相当します。
労働者1人当たりGDPは労働者1人が1年間に平均的に生み出す付加価値、労働時間当たりGDPは1時間の労働で平均的に生み出す付加価値を計算したものになりますね。このような一定期間に生み出された付加価値を表す労働生産性は、付加価値労働生産性とも呼ばれるようです。
「1人当たりGDP」と「時間当たりGDP」の比較で分かること
まずは、日本の労働生産性について眺めてみましょう。図1は日本の労働者1人当たりGDP(青・左軸)と労働時間当たりGDP(赤・右軸)の推移を表したグラフです。
労働者1人当たりGDPは1990年代後半からアップダウンしながらも、800万円前後で横ばい傾向にあることが分かりますね。労働時間当たりGDPは2000年ごろから横ばい傾向ですが、近年では緩やかな上昇が続き、長期的に見ると横ばい状態の労働者1人当たりGDPと比べて右肩上がりの傾向にあるといえます。2022年では1時間当たり5000円程度の労働生産性が平均値となります。
労働者1人当たりGDPは横ばいで推移しているのに、労働時間当たりGDPが上昇傾向にあるのは、平均労働時間が少しずつ短くなっていることを意味します。自動化や高付加価値化などにより1時間当たりに稼げる付加価値が向上している事が考えられます。
また、日本も含め、各国とも平均労働時間が短くなっています。比較的労働時間の短い女性や高齢の労働者が増えたこと、パートタイム労働者が増えたこと、男性労働者でも残業が減ったことなどが考えられそうです。
労働生産性を国際比較してみよう
日本の労働生産性は、労働者1人当たり約800万円、労働時間当たり5000円という水準が平均値であることが分かりました。ではこの数値は国際的に見ると高いのでしょうか? それとも低いのでしょうか?
日本は労働生産性が低い、などと評されている様子もよく見かけますが、実力値を確認してみましょう。
図2は各国の労働時間当たりGDPを為替レートでドル換算した推移となります。為替レートの変動でアップダウンしますが、傾向は見て取れますね。
日本(青)は1990年代にドイツ(緑)やフランス(紫)と並び高い水準に達しますが、その後は横ばいです。近年では他の主要先進国に抜かれ、その差も大きいことが分かりますね。
2000年代中頃からイタリアやOECDの平均値を下回るようになり、その後も他国との差が拡大しています。他国と比較すると、相対的に日本の水準がかなり低下していることが分かります。
特に2021〜2022年にかけては大幅に円安が進んだこともあり、ドル換算値だと大きく減少しています。ドイツや英国、韓国なども為替変動の影響で減少している様子も分かりますね。
図3が最新の2022年の比較です。日本(青)は38.5ドルで、OECD37カ国中22位、G7最下位で、OECDの平均値を大きく下回ります。「日本の生産性は低い」という指摘の正しさは、数値を見る限りでは明らかなようです。
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