「炊き立てのおいしいご飯」を再発明 自動計量IH炊飯器が持つすごみ:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(28)(3/4 ページ)
2023年7月に登場した自動計量IH炊飯器「SR-AX1」は、装置内にあらかじめ米と水を入れておけば、スマートフォンからの遠隔操作で炊飯量がセットでき、指定時間までに炊き上げるという家電だ。最近、“攻めた”白物家電を展開するパナソニックだが、狙いは何か。開発者らに話を聞いた。
「0.25合単位」で炊けるようにした理由
――気になっているのは、お米は2kg入るからほっといてもいいとして、水が2合分しか入らないので、炊飯時に水が足りないってことがあり得る気がします。これは水の残量も常時見ているわけですか?
大村氏 残量ではなく、おひつの中に入ってくる量を見ています。最大の2合に設定された場合でも、一気にお米と水を入れているわけではなく、交互に少しずつ入れて、もし水が足りない場合はその量で炊けるように米の投入もストップします。お客さまが2合に設定されても、水が1合分しかない場合は、ご飯を1合炊くようにしています。
――本体を拝見しましたが、おひつ部分って意外に小さいんですよね。本体もそれほど大きくない。メンテナンス性はどうでしょう。
大村氏 まず、おひつ部分はシンプルな2部品で凹凸も少なくして、お手入れ性が良くなるように配慮しました。本体側は米タンクも拭き取って、きれいにできるように開口部を広くしたり、凹凸もないようにしたりといった部分も配慮しています。水タンク部も外せますので、洗うことも可能です。
――機能的にも、0.25合単位で炊飯量をセットできるんですよね。ここまで細かく炊きわけられる炊飯器ってこれまで見たことないんですが。
林田氏 お1人で食べていただくシーンを想定した時に、細かく調整できる方がいいだろうなと考えました。一般の炊飯器ですと、炊飯釜に水位線が入っていて、それに合わせて水をセットしていただくわけですけど、0.25合といった細かい線を入れるとすごく煩雑になってしまいます。0.25合単位で刻んでも、水をきっちり合わせるのは難しいでしょうしね。でも自動計量なら本体側で調整するから実現できる、ということです。
瀬良海翔氏(瀬良氏) キッチンポケットアプリの方で炊飯合数が0.25合単位で設定できるんですが、ご飯中盛り何杯分とかいったところからも合数判定できます。
「今日はご飯中盛り1杯食べたいな」とか、「今日は2人で1人は小盛りで、1人は大盛りで」という場合も計算してくれるので、食べる量を自由に調整できるところもメリットかなと思います。
コンセプトが刺さっているという手ごたえ
――これ、製品名が「SR-AX1」という、なんだかAV機器っぽい型番じゃないですか。今後なんと呼べばいいのか、ニックネーム的なものが必要なんじゃないでしょうか。
林田氏 プロダクトネームはつけたいなとも思っていたんですけどね。実際、「SOLOTA」みたいなものをつけるか検討していたんですが、いい名前があれば、これからでもつけてあげたいなと個人的には思っていますけどね。
――すでに販売も始まって半年、いろいろデータも集まってきているところかと思いますが。
林田氏 売り上げとしては私たちが想定してたような動き方に近づいてきたところです。私たちとしても初めての商品で、訴求してる中身も今までの炊飯器とは全く違うものなので。当初は計画を立てることも難しかったです。購入いただいたお客さまの声が集まってきて、あ、やっぱりコンセプトはすごく理解いただいて、刺さっているんだな、と実感し始めた状況ですね。
――やっぱり購入者はDINKsが多いんでしょうか。
林田氏 いえ、そこも予想と違っていて、単身者の方が生活に取り入れていただいていますね。やっぱり購入しやすいところもあるのだと思います。いままでの炊飯器とは大きく違って見えるでしょうから、パートナーに相談しても「面白そうだな、買ってみよう!」というよりは、「ちょっと様子をみてからにしようよ」という反応になる可能性もあります。 1人だったら、他の炊飯器と比べた時に「面白そうだな。お、パナソニック製なんだ」ぐらいの感覚で買ってくれてる人が多いのかと思うんです。
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