マネジメントやスポンサー集め、技術継承……社会人顔負けの学生フォーミュラ:車・バイク大好きものづくりコンサルタントが見た学生フォーミュラ2023(4/6 ページ)
筆者は学生フォーミュラにも参加する静岡大学で、工学部大学院の客員教授を2011年から務めています。2023年からは、ECOMの社外取締役の立場を生かしてスポンサー企業として静岡大学のチームを支援することにしました。
リクルーティングの場としての大会
大会スポンサーには自動車メーカーをはじめ大手サプライヤー、CADベンダー、工作機械メーカーが名を連ねています。そして各チームへのスポンサーも数多く、関ものづくり研究所も少額ながら地元の静岡理工科大学チームに金銭的支援をしています。また筆者が取締役を務めるECOMも2023年から静岡大学チームへのスポンサーを始め、大会の1カ月ほど前にはチームメンバーが会社を訪れ、あいさつとプレゼンテーション審査のリハーサルを行い、アドバイスを含めた情報交換の場を設けました。
企業にとっては学生に会社を見てもらえるというメリットもあります。学生フォーミュラ活動を通じてさまざまな能力を身につけた学生たちと交流を持つことで、有能な学生に企業の業務内容を知ってもらうというリクルート面でも効果があるのではないだでしょうか。
会場の一部にはスポンサー企業のブースが並んでいます。筆者の元勤務先のテイ・エス テックのブースで話を聞くと、やはり一番の目的はチームメンバーへの業務内容紹介だそうです。学生フォーミュラに携わる学生たちは丸一年かけてこの大会に臨むことでさまざまな知識を得て、経験を積みます。そんな優秀な学生たちのリクルーティングには学生フォーミュラ日本大会は絶好の機会になっているのです。
さて、今回の総合優勝校である京都工芸繊維大学や、海外チームの動向、そしてこれからの学生フォーミュラに対する筆者の見解も述べていきます。
#1 京都工芸繊維大学(Grandelfino)
筆者 それでは2021年度チーフマネジャー兼ドライバーで本大会にはアドバイザーとして参戦されている藤田寿さんにお聞きします。3大会連続のゼッケン1番、明日のエンデュランスの出走順は?
藤田さん はい、最終出走です。
筆者 さすがですね! マシン、ずいぶん変わりましたか? 私2022年は取材に来られなかったので。
藤田さん 2022年からは大きな変化はないのですが、裏でカーボンコンポジットフレームにするための研究活動を進めています。
筆者 それがあの看板、クラウドファンディングですね? 資金集めとしては良い方法ですよね。
藤田さん はい、大学と連携してやっているので「ふるさと納税」と同じような扱いになり、出資してくださる方々にとってもハードルが低くなったかなと考えています。
筆者 エンジンはずっと単気筒でしたが、変えましたか?
藤田さん はい、ヤマハ発動機「MT-07」の2気筒エンジンです。ドライサンプに改造しています。私がリーダーになった2020年に変更し、3年後に総合優勝するという目標を立てて活動しました。そして2022年総合優勝できたので目標達成です。
筆者 2017年からレギュレーションが変わって総排気量が610ccから710ccになりましたよね? 当時私はMT-07に乗っていたので、あちこちのチームピットで「MT-07のエンジンいいよ!」って言いまくっていたのですよ。
藤田さん そうなんですね。私のこのエンジンは絶対向いていると考えたのですが、周りからは「こんなエンジン勝てへんよ」などと言われたので、まずはオートバイ屋さんを回ってナンバーのないMT-07をどうにか手に入れ検証してきました。本当にいろいろな人から否定されたので、逆に「今に見ておけよ」という思いが強くなりました。単気筒よりも重量的には不利なことは承知の上でドライサンプ化して重心を下げ、車両レイアウトも一から見直して改善を重ね、目標通り2022年優勝できたのでとても気持ちよかったです。
筆者 やはり単気筒の熱間始動性問題の対策の意味合いが大きいのですか?
藤田さん それもありますが、EVと4気筒が速くなってきている中、単気筒エンジンのパワーでは対抗できないという考えです。事実、今大会でも2気筒エンジンを搭載しているマシンが多いですよね。カーボンコンポジットフレームもほぼ出来上がっていて2023年10月ごろには走れる予定なので、設計変更の必要などを見極め、2024年はさらに競争力の高いマシンに仕上げます。
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