マネジメントやスポンサー集め、技術継承……社会人顔負けの学生フォーミュラ:車・バイク大好きものづくりコンサルタントが見た学生フォーミュラ2023(1/6 ページ)
筆者は学生フォーミュラにも参加する静岡大学で、工学部大学院の客員教授を2011年から務めています。2023年からは、ECOMの社外取締役の立場を生かしてスポンサー企業として静岡大学のチームを支援することにしました。
筆者は学生フォーミュラにも参加する静岡大学で、工学部大学院の客員教授を2011年から務めています。2023年からは、ECOMの社外取締役の立場を生かしてスポンサー企業として静岡大学のチームを支援することにしました。大会前には「プレゼンテーションリハーサル」を社長や取締役、人事部長、静岡大学出身の社員の前で行ってもらい、質問やアドバイスをしました。これもまた支援活動の1つです。その静岡大学のピットの様子をお伝えします。
#E7 静岡大学(SUM:Shizuoka University Motors)
筆者 それではチームリーダーの山本聖真さんにお聞きします。ここまで(エンデュランス審査前)の戦績はいかがですか?
山本さん 静的、動的合わせて20番台くらいだと思います。ただ、2022年は車検で合格することができず動的審査に進めなかったので、その点では進歩したと考えています。
筆者 そこは重要だよね。まずは走れなければ。EV(電気自動車)に移行してから何年目でしたっけ?
山本さん 2年目です。
筆者 そうですよね。2年目でしっかり動的審査に進んだということは大きな成果ですね。ICV(エンジン車)からEVにシフトして、良かった点、逆に苦労した点を教えてください。
山本さん やはり加速性能の良さですね。まだICVを採用していた時にEVの見学をしたのですがその加速の様子に驚かされました。私自身はエンジンサウンドが好きなのですが、EVもありだなと感じた瞬間です。ただ、EVの制御の複雑さ、ノイズ対策、そしてトラブル時の原因究明でどこが断線しているのかなどを突き止めるのが難しく、苦労した点です。ICVの電気周りは単純なものだけでしたが、EVは一度トラブルが起きると再度走り出すのにかなりの時間を要するというのが、難易度の高さです。
筆者 ICVのトラブルシューティングが簡単だとは言わないけど、今までの知見があるものね。実は私、半年ほど前に初めてハイブリッド車を買いました。ルノー「ルーテシア E-TECH」なのですが、一度信号待ちから全く発進できなくなって焦りまくったことがあります。一度システムをOFFにして再度立ち上げたら無事発進したのですが、メーターパネルに「異常発生、ディーラーで診てもらってください」と表示されました。ディーラーに預けたところ、メーカーと連絡を取りながら2週間調べても原因が分からなかったようです。あのルノーという巨大メーカーですらそうなんだから、やはり電気制御のトラブルシューティングは難しいんだなと思います。部員は今何人いるのですか?
山本さん 2023年の1年生がかなり入ってくれて、60人ほどになりました。
筆者 増えましたね! それだけの人数をリーダーとしてまとめるのは大変でしょう?
山本さん はい。誰に何をやってもらうのか、そもそも活動に来てもらうのにはどうしたらよいか。これからのチームのことを考えると1年生にできるだけ参加してもらって、活動の進め方や技術を伝承しなければなりません。そういうところでなかなか苦労はしています。
筆者 2023年からスポンサーさせていただいているECOMですが、従業員が60人ちょっとです。ですから同じ規模ですよね。ECOMは社員の平均年齢が34歳。経営陣も私以外は若く、アクティブな企業ですが、「給与」という大きなモチベーションツールがある。しかし、学生フォーミュラの皆さんには給与がないばかり逆に部費を収めなきゃいけない。メンバーのモチベーションを維持し、向上させるのは本当に難しいと思います。
自分自身NPO法人の理事を2度経験し、報酬なき活動の難しさを十分に知っています。60人のサークル活動のリーダーとしてのこの経験、体感は山本さんにとってこの後の人生に必ず役立ちます。特に「1年生を育てる」という視点が素晴らしい。ご自分としてはこの1年の活動についてよかった点、逆に反省する点はありますか?
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