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ひとが感じる快適さをモデリングする 〜ひとを熱的視点で捉える〜1Dモデリングの勘所(26)(2/4 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第26回は、“ひとが感じる快適さ”について考えるとともに、その一つの具体例として“ひとを熱的視点で捉える”モデリングについて説明し、定式化して、解析および検証を行う。

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活動指標と服装指標

 快適性を数値化するには、図3の6つの要因を定義する必要がある。空気温度(Air Temperature)、放射温度(Radiant Temperature)、湿度(Humidity)、風速(Air Speed)は伝熱工学の知見により、後述する式で定義される。一方、代謝量(活動指標/Metabolic Rate)、服装(服装指標/Clothing Insulation)は以下のように定義する。

 代謝量(活動指標)はひとの体を発熱体と考え、その発熱度合いをひとの活動状況から推測する。単位としては、

1Met=58.15W/m2

を使用する。表1に種々の状況下の活動指標の値を示す。これから分かるように、1Metはひとがリラックスして座っている状態での単位面積当たりの発熱量で、標準的な大人の表面積を1.7m2とすると、約100Wの熱を出していることになる。

活動状態 代謝量[M]
椅子の背もたれにもたれている 46W/m2 0.8Met
リラックスして座っている 58W/m2 1.0Met
時計を修理している 65W/m2 1.1Met
リラックスして立っている 70W/m2 1.2Met
クルマを運転している 80W/m2 1.4Met
立って軽い活動をしている(買い物) 93W/m2 1.6Met
時速2kmで歩いている 110W/m2 1.9Met
立って中程度の活動をしている(家事) 116W/m2 2.0Met
立った状態で食器を洗っている 145W/m2 2.5Met
時速5kmで歩いている 200W/m2 3.4Met
建築作業をしている 275W/m2 4.7Met
時速15kmで歩いている 550W/m2 9.5Met
表1 代謝量の値(活動指標)

 一方、服装指標は服装によって放熱が妨げられる度合い(熱抵抗)を数値化し、単位としては、

1Clo=0.155m2K/W

を使用する。表2にさまざまな服装に対する服装指標の値と、服装指標の使用例を示す。このように、各パーツの積算量として服装全体の服装指標を見積もる。

服装指標の値と使用例
表2 服装指標の値と使用例[クリックで拡大]

快適指標と不快割合

 快適性の評価には「PMV(快適指標:Predicted Mean Vote)」と「PPD(不快割合:Predicted Percentage Dissatisfied)」の2つの指標を使用する。2つの指標の関係を図4に示す。

快適指標(PMV)と不快割合(PPD)
図4 快適指標(PMV)と不快割合(PPD)[クリックで拡大]

 PMVは快適性を“暑い→寒い”で評価したもので、PMV(+)のときは暑く感じていることを示し、その値が大きいほどその度合いが大きい。一方、PMVが(−)の場合は寒く感じていることを示し、その値が小さいほどその度合いが大きい。

 PMV=0のとき、ひとは最も快適と感じ、ここから離れるほど不快と感じる。この不快度合い(何%のひとが不快と感じるか)を官能評価で求めて、指標化したのがPPDである。すなわち、PMV=0では大半のひとが不快とは感じていない、ちょうど良い状態を示している。PMV=1では30%程度のひとが暑いと感じている状態(平均的には、少し暖かい状態)、PMV=2では80%程度のひとが暑いと感じている状態(平均的には、暖かい状態)、PMV=3では大半のひとが暑いと感じている。同様に、PMV=−1では30%程度のひとが寒いと感じている状態(平均的には、少し涼しい状態)、PMV=−2では80%程度のひとが寒いと感じている状態(平均的には、涼しい状態)、PMV=−3では大半のひとが寒いと感じている。

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