進化を止めないROSは「ROS 2」への移行を加速、デジタルツイン対応も進む:ROSの進化とデジタルツインの可能性(前編)(2/3 ページ)
ロボットプラットフォームとして知られる「ROS」の需要が高まり続けている。本稿では前後編に分けて、ROSの進化とデジタルツインの可能性について考察する。前編では、ROSの最新動向とデジタルツインへの対応状況について紹介する。
ROSの活用範囲はサービスロボットなど、商用においては製造業以外での活用が広がっていたが、2023年現在では、その分野においてさらなる広がりを見せている。自動配送ロボット単体だけではなく、エレベーターといった施設との連携や、ロボットの管理を一括で行うプラットフォームの検証が増えてきている。例えば、富士ソフトのブログで紹介したOpen Roboticsの「Open-RMF」という群制御ライブラリの開発や、KDDIのROSを用いたロボットとエレベーターの連携等群制御、アサヒ飲料とソフトバンクによる動く自動販売機の検証などが挙げられる。
また、ロボットアームの動きの最適化や自律移動ロボットの経路生成など、より効率的な作業を実現するためにAIを活用するケースが増えており、特に、最近ではChatGPTなどのLLM(大規模言語モデル)によるロボット制御が注目を集め始めている。
AI(人工知能)を活用するため、ロボットにGPUを使うケースも増えてきた。このようなニーズに応えるため、各ハードウェアメーカーもROSに対応したGPU活用ソリューションの提供を始めている。
NVIDIAは、ROSの開発会社であるOpen Roboticsと提携し、2022年に「Isaac ROS」というROSライブラリをリリースし開発を続けている。このライブラリ群は、NVIDIAのGPUハードウェアを最大限に生かし、ROS上でノードの高速処理を行うことができる。Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)やAIによる物体検出、セグメンテーション、画像処理といった豊富なラインアップとなっている。AMDは、「Kria Robotics Stack(KRS)」というフレームワークにより、AMDのシングルコンピュータでROS 2やAIの性能を最大限まで引き出しパフォーマンスを向上させる取り組みを進めている。富士ソフトも、Isaac ROSやKRSなどを用いたロボットによるAI活用の検証を進めている。
2.2 ROSとシミュレーターの連携が生み出す新たな可能性
前回連載の中編では、ROSのシミュレーター連携の概要やメリットを紹介した。
仮想空間上で動作確認を行うシミュレーターを利用することで、実機においてロボットを動作させる前に課題を確認でき、さまざまなロボット開発において利用されている。
ROSのシミュレーターとして紹介した「Gazebo」は、最終バージョンの更新を終了し、2025年のサポート終了を宣言されている。後継とされていたシミュレーションライブラリ「Ignition」はGazeboの名称を継承し、開発が続けられている。まだマニュアルなどが整備できておらず、現状としては旧Gazeboが使用され続けている印象だ。
3Dグラフィックスエンジンで知られるUnityは、公式でのROS 2サポートやアールティと協力してロボティクス向け教材を開発するなど、ROS活用によるロボットシミュレーションとして使用することに活動的だ。
NVIDIAの「Isaac Sim」は、ROS 2との接続への正式対応やマニュアル内でのROS 2に関するチュートリアルの充実などROS周りの強化を行い、Isaac Sim単体での進化も遂げている。例えば、Windowsへの対応、ベルトコンベヤーや人物歩行のシミュレーター、自律移動ロボットの経路最適化「NVIDIA cuOpt」、AIのための学習データ作成の「Omniverse Replicator」といったライブラリがある。これらのライブラリを活用することでより高度なロボット開発が可能となるだろう。
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