水素で工場の電力をまかなうとどんな成果が生まれるのか:パナソニックRE100ソリューション(後編)(1/2 ページ)
パナソニックは再生可能エネルギー100%で設備を稼働させるRE100ソリューションを展開しているが、本稿では先行して実証を進めていた草津RE100ソリューション施設「H2 KIBOU FIELD」の実証内容とその実績について掘り下げて紹介する。
パナソニックは再生可能エネルギー100%で設備を稼働させるRE100ソリューションを展開しているが、2023年11月14日は英国で電子レンジなどの製造を行うパナソニック マニュファクチャリング イギリス(PMUK)で実証を開始することを発表。前編では、このRE100ソリューションの英国展開について紹介したが、後編では先行して実証を進めていた草津RE100ソリューション施設「H2 KIBOU FIELD」の実証内容とその実績について掘り下げて紹介する。
太陽電池と蓄電池、燃料電池の3電池連携で効率的に電力供給
パナソニックの「RE100ソリューション」は、太陽電池と蓄電池、燃料電池を組み合わせることで、施設や設備の稼働に必要な電力を再生可能エネルギー100%(RE100)で補えるようにするソリューションだ。一般的によく導入されている太陽電池と蓄電池の組み合わせに対し、天候により電力が十分に発電できない場合でもエネルギー効率が高い燃料電池で電力供給ができるため、太陽電池の敷設面積の削減や導入する蓄電地容量の低減などに貢献する。
パナソニックではこのRE100ソリューションの価値を実証するために、2022年4月にパナソニック 草津工場内の燃料電池工場においてこのRE100ソリューションを導入し、1年半にわたって運用をしてきた。
RE100ソリューションは、太陽電池の発電量が十分ある時はその電気で工場稼働を賄い、天候の不良時などは、水素タンクからの水素供給により燃料電池で発電する。そして、雲などの天候の急変や、工場側の電力使用量の急増など、急な変化に対しては、俊敏性のある蓄電池からの電力供給で賄うという仕組みであるため、理論的には全ての電力をこの施設で賄うことが可能となっている。また、純水素燃料電池もエネファームとして家庭用で実績のあるものを組み合わせてシステム化しており、実績のある技術を用いているため、実現性が高いものだったといえる。
しかし、設備の稼働当初は自家発電率が7割程度にとどまっていたという。「実際に実証施設を建てて稼働させてみないと分からないことも多かった。まず建設する際に現在の法規制で規定できていないところも多く、それらを自治体含め管轄機関と話し合いながら進めていく必要があった。また、実際に運用し始めても雲の動き1つで想定通りに発電できなかったり、工場側の電力需要が変化したりすることで需給のバランスが取れず、電力会社から購入せざるを得ない状況が生まれた」とパナソニック グローバル環境事業開発センター 所長 兼 エレクトリックワークス社 電材&くらしエネルギー事業部 環境エネルギーBU 燃料電池・水素SBU長の加藤正雄氏は語る。
これらの課題を1つずつクリアしながら予測精度を高め、自家発電率は98%まで上昇させられたという。「天候の予測情報を精度高く得られるようにしたことや、燃料電池工場側の電力需要予測情報をもらい需要の予測精度を高められたことで、今はほぼ100%まで高めることができている」と加藤氏は成果について述べている。
また、電力会社から電力を購入する場合、電力使用のピーク時に合わせて、契約電力量が決まり、その分の電力を一定で使用し続けることになるが、RE100ソリューションにより分散型電源とできたことで「使う分だけ創電する」ということが可能となり、ベース電源総発電量は30%削減できたという。「電力環境のトータルで見ると効率的な運用ができるということだ」と加藤氏は意義を述べる。
こうした取り組みは世界的にも珍しいことから「H2 KIBOU FIELD」には、実証開始以来700社以上の視察があったという。視察企業の内、58社が海外企業だったという。業種としては製造業や建設業が多かったとする。加藤氏は「水素を活用していくにはさまざまな環境作りが必要になる。そういう意味では視察などを通じて、パートナーを世界中に増やしていくことが重要だ」と語っている。
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