検索
連載

メタバースが急速普及する物流と建設業界、「2024年問題」などの問題解決にデジタルツイン×産業メタバースの衝撃(4)(3/6 ページ)

本連載では、「デジタルツイン×産業メタバースの衝撃」をタイトルとして、拙著の内容に触れながら、デジタルツインとの融合で実装が進む、産業分野におけるメタバースの構造変化を解説していく。

Share
Tweet
LINE
Hatena

CPS活用広がる土木領域

 土木の3D基盤は建築同様にBIMであり、グローバルではBIM for infrastructure、日本ではBIM/CIM(Construction Information Modeling:2018年に名称変更)と呼ばれている。土木においては多くの建築案件と異なり、設計と施工が分離発注となる。そのため現地調査/計画/設計は主に建設コンサルタントが行い、BIM/CIMを作成する。

 その上で、施工は施工会社が実施する形となり、別プレイヤーが担うことになる。そのため施工を前提としたBIM/CIMを施工会社側が引き継いで更新する形になる。これが建築との違いだ。また建築においてはゼネコンなどが自社の品質管理基準に基づき検査するが、土木においては行政をはじめとした発注者が検査を行う。そうした仕組みの中で、下記の「i-construction」政策をはじめとする基準改定が国交省を中心に積極的に行われている。

 土木では国交省が積極的に同政策を推進するとともに、鉄道会社や道路会社など施主企業側がCPSの活用を主導している。土木のBIM/CIMは、建築におけるBIMとは得意な領域が異なるため分けて扱われている。Autodeskの「Civil 3D」や、国産の土木3D CAD(カワダ「V-nas」、福井コンピュータ「TREND-CORE(トレンドコア)」、建設システム「KENTEM」)などが活用される。デジタルツインを展開するプレイヤーとしてはこれらBIM/CIMソフトウェア企業とともに、広大な土地をドローンや測量機でセンシングして点群/3D化することが重要なため、現場でのセンシング接点を持つ後述のコマツなど建機メーカーが展開するケースや、ニコン・トリンブルやトプコンなどの測量機器/ソリューション会社、ドローン企業などが重要なプレイヤーとなってきている。


図8:土木領域で目指されているデジタル化の構造[クリックして拡大] 出所:筆者

国交省が強力に後押しするi-construction政策

 土木領域のデジタル化は、2016年より国交省がi-construction政策として推進しており、2025年までに建設現場の生産性を2割向上させることを目標として掲げている。政策の柱の1つに「ICT土工」を位置付けており、ドローンなどによる3D測量や、3Dデータに基づく設計/施工計画、ICT建設機械による自動制御、検査の省力化など、3Dデータをプロセス横断で活用することを目指している。


図9:i-construction政策の概要[クリックして拡大] 出所:国土交通省

土木現場をデジタルツイン化するスマートコンストラクション

 コマツは土木のデジタル化ソリューションである「スマートコンストラクション」の中で、ドローンセンシング(センサーによる計測)を通じて現場のデジタルツインを生成し、進捗管理を行えるようにしている。これによって測量効率の大幅な向上を目指す。建設業界においては、ドローンで地形データを取得して3Dデータ(デジタルツイン)を構築することによる測量プロセスの効率化や、工程の自動生成などが行われている。

 これまでは測量が人手で行われており、相当な時間を要するボトルネック工程となっていた。日々の進捗や現場の状況を正しく把握することが困難なため、工程遅れが生じるなど非効率化が進んでしまっていたのだ。このためコマツはスマートコンストラクションを通じて、ドローンセンシングと取得データの点群化処理を通じて、土木現場のデジタルツインを生成し、進捗を管理できるようにした。

 その結果、測量効率は大幅に向上し、約4日かかっていた作業が20分で完了するようになった。日々の業務の始めと終わりに上記プロセスで現場のデジタルツインのアップデートを図ることで、工程進捗を可視化し、現場責任者や経営者が迅速に意思決定できるようになった。


図10:コマツのスマートコンストラクションを通じた土木現場のデジタルツイン[クリックして拡大] 出所:大林組

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る