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国内産業の中でも製造業は特殊な変化を遂げていた! 実質/名目GDPの推移を追う小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(15)(2/3 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。

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大きく縮小していたハイテク産業の名目GDP

 国民経済計算では、製造業はさらに細かい業種ごとに集計されています。今回はその詳細項目の変化も同様に見てみましょう。


図2:製造業の国内総生産(1997年から2019年にかけての変化)[クリックして拡大] 出所:内閣府 国民経済計算より筆者にて作成

 図2が製造業の業種ごとの国内総生産をまとめた、名目変化量と実質変化量の散布図です。まず目につくのが、名目で減少している業種が多いことですね。名目でも実質でも成長している業種は3つしかありません。「輸送用機械」「はん用・生産用・業務用機械」「化学」です。これらは、経済規模も大きく成長産業と言えますが物価が下がっています。

 名目でも実質でも縮小しているのが、「繊維製品」「金属製品」「窯業・土石製品」「印刷業」「石油・石炭製品」などですね。「食料品」と「一次金属」は名目では成長していますが、実質では縮小していて、やや物価が上昇している業種です。

 そして、名目で縮小、実質で成長している業種が「情報・通信機器」「電子部品・デバイス」「電気機械」です。特に情報・通信機器の名目の縮小ぶりがすさまじいですね。この業種だけで6兆円も経済規模が縮小していることになります。

 情報・通信機器や電子部品・デバイスはいわゆるハイテク産業とも言えますが、残念ながら日本では名目で見た経済規模が縮小しています。一方で、実質では成長しているわけです。実質の変化は、数量的な変化と申し上げましたが、この中には処理速度や性能向上なども加味されています。技術進歩の著しい分野ですので、性能が向上した分だけ割安になっていくという変化も含まれていることになりますね。

 逆に言えば、私たちは消費者としてそれだけ多くの情報量を消費し、より早い処理速度を享受していることにもなります。もちろん、単純に値下がりしている方向性も考えられますね。特に家電なども含まれる電気機械は、中国などとのコスト競争などで大きく価格が下落している業種とも言えそうです。

 このように、製造業では製品やサービスの機能や性能の向上がありながらも、数量面でも伸長していて、金額的には縮小しているという特徴があり、情報通信などのハイテク分野で特にその傾向が顕著だということになります。

 せっかくの性能向上を、付加価値向上に結び付けられていないという面もありそうですね。規模の経済を追うばかりでなく、付加価値を上げていく方向性の産業が増えていくと良いのではないでしょうか。

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