EV化対応進めるNTNの和歌山製作所、最新設備の“STAR”スマート工場を公開:スマート工場最前線(3/3 ページ)
NTNは新たに建設した和歌山製作所(和歌山県橋本市)の落成式を行った。最新設備やシステム、デジタル技術の活用でスマートファクトリー化を目指す和歌山製作所の取り組みを紹介する。
脱炭素への取り組みも随所に、初の愛称は従業員から募集して決定
和歌山製作所では環境負荷低減への取り組みも積極的に進めている。
2023年6月からはCO2フリーの電力を100%使用しており、約85%のCO2排出量の削減に成功した。さらに、2024年1月には太陽光パネルを設置し、同年8月から自己消費する予定になっている。
熱処理工程では電熱式の熱処理炉を採用。加熱用のガスが不要なためガス式に比べて、LPガスの使用量を57%削減できるという。熱処理炉の外壁には高効率な断熱材を使い、熱の損失を防いで電力消費の低減を図っている。
敷地内には移動型独立電源「N3エヌキューブ」を設置した。太陽光パネルと小型風車、蓄電池などをコンテナに格納できる独立電源となっており、通常は災害物資の保管に使い、災害時には運搬してすぐに現地で発電を行える。実際に、2019年に台風15号で大規模な停電が発生した際には、NTNはN3エヌキューブを現地に運び、支援活動を行っている。
愛称は「NTN STAR WORKS WAKAYAMA」
世界各地に40以上あるNTNの生産拠点の中で最も新しい工場となるため、和歌山製作所への愛称を従業員から募集し、候補の中から「NTN STAR WORKS WAKAYAMA」に決定した。工場に愛称を付ける試みは同社にとって初めてだ。
STARには、STreamlining(整流化)とAutonomous(自動化、自律化)、High Respons(ハイレスポンス)と、事業分野におけるSTAR(頂点)を目指すという意味が込められている。
整流化では、モノの流れを見直し、加工時間と工程間の滞留時間を短縮、材料の投入から出荷までのリードタイム短縮に取り組む。自動化、自律化では、生産に関するあらゆるデータを連携、活用して人による作業、判断を自動化する他、ロボットや自動倉庫、AGVなどの導入により、24時間の安定操業を実現する。ハイレスポンスでは工場の必要なデータを素早く入手し、データに基づいた経営判断、ユーザーニーズへの迅速な対応を行うという意味付けになっている。
「NTNの最新工場として、世界に40カ所以上ある製造拠点の模範となる製造工場を目指そうという趣旨で愛称を募集した。各地の製造拠点もさまざまな取り組みを進めており、お互いに競い合いながら工場のレベルを高めていってほしい」(鵜飼)
関連記事
- ベアリングは脱炭素にどう貢献するか、自動車や産業機械領域でのNTNの取り組み
NTNはカーボンニュートラル達成に向けた事業的取り組みや目標設定に関する説明会をオンラインで開催した。 - モノからコトへ、NTNが目指す“軸受を見守る”サービス事業の拡大
NTNは2022年9月28日、「しゃべる軸受」や風力発電装置向け状態監視システム、軸受診断アプリなど、さまざまな事業で展開しているサービスビジネスの動向について説明した。 - NTNが「しゃべる軸受」を開発、センサーと発電/無線ユニットを内蔵
NTNは、センサーと発電ユニット、無線デバイスを軸受に内蔵することで、温度、振動、回転速度の情報を無線送信する「しゃべる軸受」を開発した。装置内部に組み込まれる軸受がセンサーを内蔵するとともに、発電デバイスによって軸受の回転時に得られる電力を用いて無線デバイスを動作させ、センサーデータを自動で無線送信できる。 - 5万通りのオフィスチェアづくりをサポート、イトーキ関西工場で進めるAI活用
創業130年を超えるオフィス家具のイトーキ 関西工場のチェア生産工程における自動化、無人化への取り組みを紹介する。 - スマート工場化は次段階へ、AI活用の定着とアプリケーション拡大に期待
スマート工場化の動きは着実に広がっている。その中で2022年はAIを活用した「アプリケーションの拡大」をポイントにデータ活用のさまざまな形が広がる見込みだ。 - スマート工場は“分断”が課題、カギは「データ取得」を前提としたツールの充実
工場のスマート化への取り組みは2020年も広がりを見せているが、成果を生み出せているところはまだまだ少ない状況だ。その中で、先行企業と停滞企業の“分断”が進んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対応なども含めて2021年もスマート工場化への取り組みは加速する見込みだが、この“分断”を解消するような動きが広がる見込みだ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.