検索
連載

炊飯器のモデリング(その2) 〜理想的な炊飯器のモデリングを行う〜1Dモデリングの勘所(23)(2/4 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第23回は各種炊飯器の分析と炊く方法(レシピ)を調査し、鍋材料が重要な役割を担っていることを確認する。その上で、うまく材料を選択することで、入力制御なしに“お米をおいしく炊く経験的方法”を実現する理想的なアプローチがあることを示す。最後に、この理想的な炊飯器をモデリングし、解析して炊飯性能を確認する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

炊飯器の鍋材料

 以上、現在使用されている炊飯器の分析から、炊飯には炊飯器の鍋材料が関係していることが予想される。鍋は熱源のエネルギーをお米(水を含む)に伝えて、お米の温度を上昇させ、お米をご飯に変化させる重要な要素である。鍋材料として使用可能と考えられる材料とその物性値を表1に示す。前述のガス炊飯器の鍋材料はアルミニウム、土鍋炊飯器の鍋材料は陶器である。

鍋材料とその物性値
表1 鍋材料とその物性値[クリックで拡大]

 ここで、鍋材料に着目して、熱源⇒鍋⇒お米の熱の伝わり方を調べてみる。図2にその状況とモデル図を示す。熱量の連続性から、

式2
式2

 鍋を通した熱伝導について、

式3
式3

 鍋およびお米の熱容量に関係して、

式4
式4

が成り立つ。上式を解くことにより、鍋およびお米の温度変化を知ることができる。

鍋材料に着目したモデル
図2 鍋材料に着目したモデル[クリックで拡大]

 図3に鍋材料(アルミ鍋および土鍋)による温度上昇の傾向の違いを示す。入熱はいずれも280Wで、アルミ鍋の肉厚は4mm、土鍋の肉厚は10mmとした。この場合、鍋径を0.15mとすると、アルミ鍋の熱容量は176J/K、熱コンダクタンスは1038W/K、土鍋の熱容量は321J/K、熱コンダクタンスは2.65W/Kとなる。お米+水は1.5合炊きとして、熱容量は1792J/Kとした。

鍋材料による温度上昇の傾向の違い
図3 鍋材料による温度上昇の傾向の違い[クリックで拡大]

 図3から分かるようにアルミ鍋は熱伝導の良さから、鍋底温度とお米の温度はほとんど一緒である。一方、土鍋の場合は、熱伝導の悪さから、熱源のエネルギーは、最初は鍋の温度上昇に消費され、ある程度鍋の温度が上昇してから、お米の温度が上昇していることが分かる。この結果から、土鍋を使用した場合のお米の上昇傾向は、前回の“おいしいご飯を作るためのお釜内部のお米および水の目標温度”の傾向に合致していることが分かる。すなわち、土鍋の場合は無制御で炊飯可能であるが、アルミ鍋の場合は温度をモニタリングして入力を制御する必要がある。このことから、土鍋が理想的な(無制御という意味で)炊飯器であると考える。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る