5Gで17台のAMRを駆動し搬送負荷30%削減、量子アニーリングも駆使するNEC掛川工場:スマート工場最前線(1/4 ページ)
NECプラットフォームズは2023年8月から掛川事業所に建設した新工場の本格稼働を開始した。本稿では、先進技術を採用した同工場のモノづくりについて紹介する。
NECの中でハードウェア製品の開発と生産を行うNECプラットフォームズは2023年8月から掛川事業所(静岡県掛川市)に建設した新工場の本格稼働を開始した。本稿では、5GやAMR(自律搬送ロボット)などの先進技術を積極的に採用した同工場のモノづくりについて紹介する。
「グローバル One Factory」を目指すNECプラットフォームズ
NECプラットフォームズは、NECのハードウェア開発、生産部門を統合する形で2014年に発足した。複数の製造会社や部門が統合して生まれたことで、ネットワーク関連機器やサーバなどのIT関連機器、海底ケーブルなど幅広い製品分野の開発や製造を行っていることが特徴だ。これらの幅広い製品開発を通じ、LSIやハードウェア基盤技術、ソフトウェア、セキュリティなどの技術を蓄積している。
現在、NECプラットフォームズが新たなモノづくりの姿として目指しているのが「グローバル One Factory」である。これは、複数の開発/生産拠点が協調して1つの工場のように振る舞えるようにするものだ。ある工場で生産していたものを、需要に合わせて別の工場に振り向けたり、複数拠点で同じ生産工程を同時に立ち上げたりすることを容易に行えるようにする。そのための共通基盤として、情報システムやセキュア生産、生産技術、自働化プラットフォーム、需給プロセス、開発プロセスの共通化や、使用する部品の標準化などを推進している。
特に重点的に取り組んでいるのが、サステナブルなサプライチェーンやセキュア生産を推進する「安全安心」、自働化やスマートファクトリー化を推進する「高効率、高品質」、再生可能エネルギーの活用や環境経営を推進する「エコ」の3つのポイントだ。NECプラットフォームズ 執行役員常務の埜本康之氏は「目指しているのは、生産革新活動をベースに自働化を進め、最先端のデジタル技術を活用し、サイバー空間とフィジカル空間を連携して、多品種生産に柔軟に対応できるモノづくり体制だ。掛川事業所の新棟はその象徴的な取り組みの1つだ」と語っている。
もともとは白黒テレビを生産していた掛川事業所A棟
掛川事業所の新棟(新A棟)はもともとは、1970年に白黒テレビの生産を行うために建設された。その後、時代の流れに合わせて、ポケットベルやFAX、携帯電話、モバイルルーターなどへと作る製品を変化させてきた。現在は、5Gモバイルルーターやホームゲートウェイなどのネットワーク製品を中心に生産を行っているが「近年のサプライチェーンリスクや経済安全保障の問題などからネットワーク製品の国内生産強化を図るために、今回新棟に建て直した」(埜本氏)。
新A棟は、地上4階建てでフロア面積は9315m2、延べ床面積は1万5632m2、生産能力は年間でネットワーク関連機器約300万台となっている。年間約281MWhの太陽光発電システムも設置している。2022年3月に着工し2023年3月に完成した。
フロアレイアウトは、1階では大型製品やカスタマイズ製品の製造を行うが、小型製品については、2階から3階、4階へと生産工程が進むにつれて上層階に流す構成としている。2階は表面実装部品の実装を自動で行うSMTラインとなっており、3階では後付け部品の実装、4階では製品の組み立てや検査、梱包などを行っている。2階で基板に部品を自動実装できるものを行い、その後、3階では自動実装できない部品の実装を行う。最後にその基板を周辺部品や筐体などに合わせて組み立て、梱包や検査を行うという流れだ。
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