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必要なスキルを見極め洗い出す、スキル整理に必要な2つの考え方と進め方ゼロから学ぶ! 製造業のスキルマネジメント(2)(2/3 ページ)

製造業を取り巻く環境が変わる中、力量管理で扱う人材情報に注目し、戦略的な人材育成/配置や組織力強化に活用する企業が増えてきました。本連載では組織的なデータ活用による発展的な力量管理を「スキルマネジメント」と呼び、その考え方や取り組み方を解説していきます。

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フォアキャスティング型のスキル設計

 フォアキャスティング型のスキル設計は、現時点の組織や職務で要求されている業務遂行に必要なスキルを洗い出していく方法です。この方法は、現場主導のボトムアップアプローチが適しています。現場の実務は現場の方が一番よく理解しているからです。

 ただ、自分たちの組織や職務で求められるスキルを構造的に整理することが難しいというケースもあるでしょう。その際は、社内外の第三者からの意見を聞く場を設けることをお勧めします。

 フォアキャスティング型の良い点は、現状業務を起点とするため、整理のイメージがつきやすく、比較的取り組みを始めやすい点です。多くの製造業は品質マネジメントシステムの文脈で、ISO 9001やITAF 16949の認証を取得しています。これらの認証は従業員の力量管理を要求していますが、既にスキルマップなどでスキルを整理し、継続的に見直しできているようであればそれをベースにできます。

 一方、フォアキャスティング型の注意点が2つあります。1つ目は、職場単位での個別最適化が行われやすい点です。製造業の場合、複数拠点で同一製品を製造しているケースや、製品自体は異なるものの技術の専門性や一部製造工程が共通しているケースがあります。仮に個別の拠点単位でスキル整理を進めた場合、どうなるでしょうか? スキルの粒度がばらばらになり、それらを組織や職場で横串にして比較/評価できなくなります。

 こうなると、A拠点からB拠点へと臨時の助っ人を派遣する場合に、その人材を決めることや、対象事業を成長させるために必要な人材やスキルの充足状況を把握することが難しくなります。大きい会社の場合、拠点や部門をまたいだスキル整理は時間を要する点が頭を悩ませる課題となりますが、それでもなお、スキルに共通性があると思われる他組織や職場は最低限、プロジェクトに参画いただくことをおすすめします。

 2つ目は、外部環境の変化や事業戦略の変更に基づく、将来的に自社に必要となり得るスキルや、現在不足しているスキルに気付きにくいことです。例えば、ハードウェア系の製品が主流の会社でベテラン技能者が退職し、現場人材が不足しているとします。その場合、対象製品を作る職場は、ハードウェア系の技能職を育成するために必要なスキルを定義し、採用/人材開発していくことになります。

 一方、環境変化でハードウェア系ではなく、ソフトウェア系人材が事業運営上重要であるにもかかわらず不足しているとしたらどうでしょうか。その会社が本来優先すべきは、ソフトウェア系人材を育成するためのスキル定義であり、能力開発プログラムの準備かもしれません。こうした視点は職場や現場主導だと気付きにくいことは事実です。

バックキャスティング型のスキル設計

 バックキャスティング型のスキル設計は、外部環境の変化や事業構造の変化を起点として、将来必要なスキルを見極め、定義する方法です。この方法は、マネジメント主導のトップダウンアプローチが適しています。

 バックキャスティング型は将来を見据えて開発すべきスキルを探索するアプローチですが、現状業務の遂行に必ずしも必要ないスキルも多いのが特徴です。組織は現状維持バイアスにかかりやすいため、「今」必要のないスキルを開発しようというモチベーションは湧きにくいと推察します。そこで重要になるのは、経営サイドが強い意志を持って将来必要なスキルを組織へ明示し、事業でそれらを発揮する場を粘り強く作ることです。

 バックキャスティング型は自社/組織のありたい姿と現状のスキルギャップを特定し、ギャップを埋めるために必要なスキル(以下、クリティカルスキル)を特定します。重点的に採用/育成すべきスキルの数を絞り込むことで、評価基準の設計や評価自体が容易になります。

 一方、クリティカルスキルの見極めは世の中のトレンドや事業/組織の課題を俯瞰して捉える視点が必要で、難易度が高いと言えます。新しい仕事を作り発展させるためのスキルとも言えますが、自社としてそれを開発/発揮する場を設けないとなかなか「人が育たない」ということもありえます。やはり見極めは特定の部門というより、会社を挙げて取り組むべきテーマになるでしょう。


スキル設計の手法[クリックして拡大] 出所:Skillnote

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