脱炭素社会と循環型社会の両立は一筋縄ではいかない:自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)
まだまだ暑いですね。1週間お疲れさまでした。来週は台風が接近してくるようです。台風といえばお盆期間を台風が直撃した際、NHKでは台風の影響を逐一テロップで流していました。鉄道などの情報が主でしたが、物流に関しても言及があったのが印象に残っています。
まだまだ暑いですね。1週間お疲れさまでした。来週は台風が接近してくるようです。
台風といえばお盆期間を台風が直撃した際、NHKでは台風の影響を逐一テロップで流していました。鉄道などの情報が主でしたが、物流に関しても言及があったのが印象に残っています。物流企業各社がどこそこのエリアで集荷や配達を中止したり、遅れが出たりしている、と流していました。過去にはクルマが横転するような強風をもたらす台風もあったので、物流企業がそうしたアナウンスをできるのはいいことですよね。
SNSをみると、オンラインショッピングを利用した人が「そんなに急がなくていい、台風が通り過ぎて落ち着いてからで構わないって伝えたい」と投稿していました。締め切りや日持ちなどの事情で集荷や配達を急ぐ荷物もたくさんあるはずですが、急いでいない人が急いでいないと表明できる仕組みがあるといいですね。以前、発送がゆっくりでいいと選択した人にポイントを多く付与するオンラインショップがありました。
とはいえ、物流量が膨大な現状で、すぐに欲しい人とゆっくりでいい人を分けるのは荷主企業にも物流企業にも負担になりそうにも見えます。実際に「特に急がない」というつもりで配送日を指定せずに注文すると、配送日で指定できる範囲よりも早く届いたことがあります。素人考えではどんどん発送する方が効率的に思えます。
「物流量が膨大」とはよく見聞きしますが、実際はどれくらいの規模なのでしょうか?国土交通省は2023年8月25日、令和4年(2022年)度の宅配便の取り扱い実績を発表しました。宅配便は前年度比1.1%増だったそうです。パーセンテージだけを見るとさほど劇的ではありませんが、実際の取り扱い個数で見ると宅配便は50億588万個です。平成30年(2018年)度は宅配便の取り扱い個数が43億700万個ですので、その増加ぶりがよく分かります。
ちなみに、これは宅配便運賃を国土交通省に届け出ている事業者を対象にした統計で、宅配便とは「一般貨物自動車運送事業の特別積合せ貨物運送又はこれに準ずる貨物の運送及び利用運送事業の鉄道貨物運送、内航海運、貨物自動車運送、航空貨物運送のいずれか又はこれらを組み合わせて利用する運送であって、重量30kg以下の一口一個の貨物」と定義されています。
宅配便だけでこの規模なのです。ちなみに、メール便は2018年度以降前年割れが続いていますが取り扱い個数は40億3200万冊あります。フードデリバリーやネットスーパーまで含めると大変な数になりそうです。部品や素材の仕入れなど「宅配便」に該当しない物流も数多くあります。
さて、政府が2023年6月に取りまとめた「物流革新に向けた政策パッケージ」では、トラックの長距離輸送から鉄道や船舶へのモーダルシフトを強力に推進することが打ち出されています。これに合わせて国土交通省が調査した中長距離フェリーのトラック輸送に関わる積載率動向によると、積載率が70%を下回る航路が複数あったようです。
急ぐか急がないか、陸海空のどの方法で運ぶか、玄関で直接受け取るのか、宅配ボックスを利用できるのか、営業所まで取りに行けるのか……さまざまな組合せによってどこまで効率を高められるのでしょうか。
モノが運ばれ、移動する際には多かれ少なかれCO2が排出されます。カーボンニュートラル(脱炭素)の実現が語られるときに物流は課題になる業種の1つですが、モノをつくる業界も含めてあらゆる企業が脱炭素社会にどう貢献できるかが問われています。
その一方で、サーキュラーエコノミーや循環型社会の実現といったスローガンもよく見聞きします。資源の消費を抑制することで環境負荷を低減しようという考えです。両方が実現されるのが理想的ですが、脱炭素社会と循環型社会が両立できないこともあり得ます。
自動車業界の方は、バッテリーを例にするとしっくりくるのではないでしょうか。EV(電気自動車)は走行中にCO2を排出しないけれども、バッテリーを製造するときにはどうか、その原料の採掘ではどうか、バッテリーをリサイクルするときにCO2が発生するのではないか……と課題と貢献が表裏一体です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.