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スマホ時代にカメラの未来を作り出せ、キヤノンが「PowerShot V10」にかけた思い小寺信良が見た革新製品の舞台裏(27)(3/5 ページ)

2023年6月22日に発売した「PowerShot V10」でVlogカメラ市場に参入を果たしたキヤノン。しかし、そのスペックや価格設定を見ると、他社とは異なる着眼点があるように感じられる。PowerShot V10の開発者たちに、コンセプトや仕様について疑問をぶつけてみた。

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内蔵スタンドが自然な自撮りをサポート

――自分を撮るっていう意味では、1人で撮影するところがベースにあるように思うんですよね。それはiVIS miniの時とあんまり変わってない感じがします。

稲積氏 そうですね。例えばカフェとか街中で自分の食事シーンを撮るとしても、今のカメラだとどうしても三脚に付けないとできないというところがあります。でも、三脚をつけるとカフェでは目立ってしまう。自然な自分の姿を撮りたいと思っているのに、周りの目が気になって撮影が楽しめないし、食事も楽しめないという悩みを持つ方もいるようです。

 そこで内蔵スタンドを入れて、1人でも快適に自分を撮れるようにしました。最初はスタンドが後ろ側にしかいかないような、本当に自分をアオリで撮るっていうようなものだったんです。


スタンドは前でも後ろでも使える[クリックして拡大]

 ただ撮影シーンの多様化と言いますか、手元を撮るような「Study with me動画」とか、料理を作っている動画とか、そういうのもいろいろとYouTubeとかで拝見して、他にも撮影シーンがいろいろありそうだと。前側にも倒せたら、そういうシーンにも適用できるんじゃないかということで、内蔵スタンドの稼働範囲をより広げて前にも傾けられるようにしました。

――持って撮りやすいという点では、単焦点19mmという超ワイドレンズを搭載していますよね。これで自分を撮ると、あんまり手を伸ばさずにバストショットぐらいで撮れる。これは相当計算された仕様だろうと思いました。

大辻氏 コンパクトデジタルカメラ、例えば弊社のコンパクトカメラにグリップを付けて自撮りしている方にインタビューした際に、なんだか腕が疲れていそうだったんですよ。(一同笑)

 具体的にはおっしゃらなかったんですけども、ずっと腕を伸ばして撮っているから絶対疲れたよな、というのが分かって。女性が自分を撮るときにも、手を真っすぐに伸ばさないで、曲げた状態で気軽に持っていられる必要があると感じました。さらには手ブレ補正で画角が狭まることも想定した上で、最適な画角設定にしました。

――なるほど。このレンズなんですけども、絞りがついていて、しかもちゃんと円形絞りを採用されていますよね。これは非常にコストもかかるところですよね。

石川幸司氏(以下、石川氏) そうですね。もっと単純な2枚羽根の菱形絞りなどの技術もありますけど、やはりカメラメーカーのキヤノンとして、多段階にしっかり露出補正ができて、なおかつ円形のボケが得られるという、こだわりの1つとして入れさせていただきました。


設計を担当したICB開発統括部門の石川幸司さん

――こんな小さい円形絞りを初めて見たんで、びっくりしました。

石川氏 あとレンズ技術で言えば、NDフィルターの搭載もこだわったところではあります。コストもかかりますし、全体のサイズにも関わってくるところですけども、カメラにあまり詳しくない人でも難しい設定なしにきれいな動画が撮れるようにしたい、というのが企画からの要望でした。「NDって何?」という人でも、シャッタースピードが上がりすぎてパラパラした動画にならずに撮影できるようになっています。

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