【実録】製造業のファクトリーIoTでアジャイル開発してみた:製造業のためのアジャイル開発入門(5)(2/3 ページ)
複雑性/不確実性に対応するためソフトウェア開発業界で広く採用されている「アジャイル開発」の製造業での活用法を紹介する本連載。第5回は、製造業のファクトリーIoTの開発で、どのようにアジャイル開発を導入し、活用したのかを紹介する。
アジャイル開発「守破離」の破
試行錯誤と取捨選択
振り返り、改善作業となるレトロスペクティブでは、KPTやFun/Done/Learn、Timelineなどいろいろな手法を試しました。いろいろな方法を経験した結果、普段の振り返りでは主にKPTを、大きなリリースの終わりなどにTimelineを実施するようになっていきました。
さらに繰り返していく中で、KPTを改良しKPTA(Keep、Problem、Try、Action)という独自の手法も作りました。Tryではないが実施したいことをActionとして次スプリントに反映するというものです(後々知ったことですが、KPTAは既に存在する手法でした。ただし、ここでのKPTAはわれわれのチームが独自に考えた内容です)。
プランニングポーカーやバーンダウンチャートなども使っていましたが、いつしか使用しないようになっていきました。自分たちに合わないものや、不要になっていったものは徐々に切り捨てて行きました。
さらにスプリントが進んでいくと、開発者が自ら考え、動くことができるようになっていったため、スクラムマスターを廃止する方向になりました。開発者が持ち回りでスクラムイベントの進行役を担うなど、開発者全体でスクラムマスターの役割を担う形になっています。
アジャイル開発 守破離の離
コロナ禍の影響:プロジェクトルームからフルリモートへ
スクラムにのっとった開発スタイルから独自の形に変化を遂げている中、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが発生しました。それに伴い、チームだけでなく会社全体がフルリモート体制に移行するという判断を行いました。
プロジェクトルームでホワイトボードを使って行っていたさまざまな管理、検討、コミュニケーションを全てWeb上に移行しました。具体的には下記のようなツールを使用しました。
- Web会議ツール:メンバーは常時Web会議に入り、常時通話可能状態にすることで、いつでも気軽に話しかけられる状態を作りました。この結果、リアルタイムでの連絡や相談を実現しました
- GitLab:タスクボードの代替としてGitLabの「issue」を使用しました。プロダクトバックログアイテムを親issueとして作成し、そのプロダクトバックログアイテムを実現するためのタスクを子issueとして作成しひも付け、プロダクトバックログと、スプリントバックログを見える化しました
- Miro:ホワイトボードを用いた連絡相談や、議論は「Miro」を使って再現しました。GitLabのissueと比較すると自由度が高く、同時編集が可能なため、チームメンバー全員で操作しながら話すのに向いています
以前はチームメンバー全員がプロジェクトルームに集まることで活発なコミュニケーションを実現し、チーム全員が協力しながら開発することができていました。今はその状況をフルリモートでも再現することで、アジャイル開発の良さを維持し、以前と変わらず1週間スプリントで新機能や機能改善、バグフィックスをリリースし続けています。
ただし、オンラインツールを導入しただけでうまくいった、というわけではないと思っています。これらのフルリモートでの活動の前提には、プロジェクトルームで顔を合わせながらやってきた経験、培ってきた関係性があった上でこそ成功したものだと思います。
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