パナソニックの車載電池は2030年にエネルギー密度1kWh/lへ、生産能力も200GWhに:組み込み開発ニュース(2/3 ページ)
パナソニック エナジーが北米における車載電池工場の投資や円筒形電池の高容量化など中長期戦略の進捗と今後の取り組みについて説明。2030年度には車載電池工場の生産能力が現在の4倍となる200GWh、電池セルのエネルギー密度も同25%増となる1kWh/lまで高めていく計画である。
ネクストカンザス以降の新工場は「1つ1つ丁寧に、急いで立ち上げ」
パナソニック エナジーの成長をけん引する車載事業は、2030年度の売上高目標が3兆円で、2022年度比で約3.8倍にまで拡大する見込みだ。そのために2030年度のグローバル生産能力を現在の約4倍の200GWhまで増強する方針である。「これを実現するためには、電池の高容量化や生産性向上などによる『競争力強化』、新工場での生産のスムーズな立ち上げと安定供給に必要な『サプライチェーン強靭化』、そして新たな工場の建設による『生産能力の拡大』が必要になる」(只信氏)という。
車載事業の競争力強化ではまず、円筒形電池で25年以上の歴史を重ねてきた先駆者としての優位性を生かして高容量化で業界をリードする。現在、車載電池の中核であるネバダ工場で生産する2170セルは第3世代の技術を採用しており、体積エネルギー密度は第1世代と比べて3倍以上の800Wh/lとなっている。2025年度には、体積エネルギー密度を5%向上した次世代の2170セルの立ち上げを予定している。
和歌山工場で4680セルの量産開始が遅れるのは、次世代2170セルの高容量化技術を前倒しで適用するためだ。只信氏は「より高性能の4680セルをネクストカンザスに当たる新工場で量産できるようにする」と狙いを説明する。その上で、2030年度には体積エネルギー密度で1000Wh/l(1kWh/l)の電池セルの開発を目指していく。「プロトタイプ開発のレベルであれば既に実現可能だ。今後は、この性能の電池セルを大量生産し、信頼性も確保しなければならない」(パナソニック エナジー 副社長執行役員 CTOの渡邊庄一郎氏)。
競争力強化のもう1つの柱である生産性向上と投資効率改善では、ネバダ工場の経験を新たに建設中のカンザス工場に展開するとともに、さらに進化させていく必要がある。ネバダ工場では、生産能力の継続的改善で今後は生産数量を5%伸ばせる計画だ。そして、先述した体積エネルギー密度を5%向上した次世代の2170セルへの切り替えを進めることで、電池容量としての生産能力を10%向上できる見通し。現時点の生産能力は35G〜38GWhなので2025年度は40GWh前後になる。
カンザス工場は、ネバダ工場と比べてさらなる人生産性の向上と設備投資額の削減を進める。人生産性の向上では1GWh当たりの人員を20%減、設備投資額を10%減としたい考え。次期新工場となるネクストカンザスでも同様の生産性向上と投資効率改善を進める方針である。
そして、生産能力の拡大に向けた新たな工場の建設については、ネクストカンザスとして2023年度内に北米新拠点を決定するという方針を除き明言は避けた。只信氏は「カンザス工場が完成して生産能力が約80GWhになるが、ネクストカンザスの新工場もネバダやカンザスと同程度の生産能力になるだろう。新工場を建設するごとに、競争力強化につながる高容量化、生産性向上、投資効率改善をレベルアップさせていく必要がある。1つ1つ丁寧に、しかし急いで立ち上げていきたい」と強調する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.