TDKが独自のAIデータ分析プラットフォームを開発、1時間かかった粒界の記入を数秒に:マテリアルズインフォマティクス(1/2 ページ)
TDKは、マテリアルズインフォマティクス推進の一環として、独自のAIデータ分析プラットフォーム「Aim」を開発した。
TDKは2023年5月23日、東京都内で記者会見を開き、マテリアルズインフォマティクス(MI)推進の一環として、独自のAI(人工知能)データ分析プラットフォーム「Aim(エイム)」を開発し、同年4月に運用を開始したと発表した。【訂正あり】
最大の特徴はカスタマイズ可能で「痒いところに手が届く」
Aimは、同社の各部署に蓄積されたデータ解析技術を全社員が使いやすくすることやAIとビッグデータの活用で必要となる良質なデータを蓄積することなどを目的に掲げ、同社が独自開発したAIデータ分析プラットフォームだ。
海外拠点を含む同社の従業員が無料で使え、社内で培ったデータ分析技術を集約している他、専用ソフトのインストール不要で、Webブラウザからアクセスできる。利用に当たっては、社員に配布されている共通IDを入力してログインし、PCからAimのデータベースへのデータ格納はドラッグ&ドロップで行える。
最大の特徴はカスタマイズ可能な点だという。同社 技術・知財本部 応用製品開発センター ソフトウェアソリューション開発部 第3開発室 室長の山田貴則氏は、「社外にも優れたデータ分析ツールはあるが、特定の素材開発では痒いところに手が届かないケースがある。一方、Aimは搭載されているツールをカスタマイズ可能なため、各素材の開発に適した仕様に調整できる」と話す。
Aimを用いた材料開発では、実験結果データや画像解析の結果データ、シミュレーション結果データ、パブリックデータ、文献データといった客観的なデータと素材開発者の気付きやひらめきをAimに入力することで、同社の熟練者が培った手順でAIが数値データを解析し、人が行うよりも安定した結果が得られる。「さまざまな条件での実験結果や素材の堅牢性に影響を与える要素などを調べられる」(山田氏)。
Aimの使用例として粒子解析と画像の定量化を紹介した。粒子解析では、Aimに粒子の境界(粒界)が見えない部分がある材料画像を入力し、搭載されたAIでわずかな手掛かりをもとに粒界の位置を予測し、画像処理を行い、各粒子のサイズや円形度を算出する。「磁石の開発では、性能に影響を与える粒子のサイズを調べる必要がある。しかし、通常のシステムでは粒界を判断できないため、これまでは手作業で材料画像1枚当たり30〜60分をかけて粒界を記入していたが、Aimでは数秒で粒界を予測可能だ」(山田氏)。
画像の定量化では、Aimに主成分を含む4成分の比率や混ざり具合を知りたい材料画像を入力し、搭載されたAIで4成分の位置を可視化した後、画像分析を実施し、各成分の比率や混ざり具合を数値化する。これにより人が行った分析よりも安定した結果を得た。加えて、他の材料開発者のノウハウを取り入れた分析にも対応している。
今後は、同社がMI活用の柱としている「データの生成」「データの共有」「データの分析」「人材の育成」「材料開発支援」の仕組み構築や運用の拡大、定着に向けた活動を継続する。Aimの適用範囲も拡大し、AI解析技術の内製化を図り、開発活動におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する。
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