新車生産は新型コロナからようやく復活の兆し、2023年度は反動増へ:自動車メーカー生産動向(2/3 ページ)
日系乗用車メーカー8社の2022年度の世界生産合計は、4年ぶりに前年実績を上回った。
トヨタ自動車
メーカー別に見ると、トヨタの2022年度のグローバル生産台数は前年度比6.5%増の913万247台と2年連続で増加した。これまでの年度の世界生産で最多だった2016年度を上回り、過去最高を更新した。けん引役は海外生産で、同9.2%増の634万3446台と2年連続のプラス。年度の海外生産として過去最高となった。生産台数の増加に伴い、海外販売ならびに世界販売も過去最高を記録した。前年度に比べて半導体不足が緩和したこと、前年が東南アジアでの新型コロナウイルスの感染拡大により世界的に部品供給が滞った反動が表れた他、北米やアジアでの能力増強が奏功した。
地域別では、主力の北米は半導体不足の影響はあったものの、前年度に比べて緩和したことや、前年度に発生した東南アジアからの部品供給難の反動増、さらに生産能力の増強や生産最適化などの実施により、前年度比3.8%増と2年連続で増加した。中国は、5月頃まで上海のロックダウンや、11月以降のゼロコロナ政策の影響など大きなマイナス要因があったが、前年度の部品供給難に対する反動増や、能力増強、生産最適化などにより、通期では前年度比3.9%増と2年ぶりのプラスで、中国生産を行う5社では唯一の前年超えだった。
中国以外のアジアも前年度のロックダウンの反動や、タイやインドネシアを中心に能力増強を実施。主要拠点のタイが同21.0%増、インドネシアが同22.6%増、マレーシアが同48.9%増、インドが同136.2%増と、軒並み高い伸びを見せた。その結果、アジアトータルでは同12.4%増と2桁パーセント増を確保し、3年連続で前年実績を上回った。欧州は「ヤリス」などが部品構成の関係から半導体不足の影響が少なく同9.1%増、中南米も同18.8%増と、それぞれ3年連続のプラスだった。
国内生産は、前年度比0.9%増の278万6801台と3年ぶりに前年実績を上回った。ただ、8社の国内生産の中では最も低い伸び率で、半導体など部品供給不足の影響が大きく表れた格好だ。国内市場の納期短縮を目的に、年明け以降、国内向けの部品供給を増やしているが、それでもモデルサイクルの関係で受注を停止している車種がある他、ハイブリッド車を中心に納期が6カ月以上に及んでいる状況だ。
国内向けの部品供給を増やしている様子は、3月単月の数字からも伺うことができる。3月のグローバル生産は前年同月比3.8%増の89万9684台と3カ月連続でプラスを確保し、全ての月を通じて単月生産として過去最高を更新した。好調をけん引したのが国内生産で、同20.5%増の31万5356台と3カ月連続の前年超え。国内向けに優先的に部品供給を増やしたことに加えて、前年3月が宮城・福島沖地震でサプライヤーが被災した他、系列サプライヤーの小島プレスに対するサイバー攻撃などにより国内拠点で稼働停止が相次いだ反動増も表れた。
その一方で海外生産は、前年同月比3.4%減の58万4328台と2カ月連続で前年実績を下回った。地域別では、北米は部品供給不足の影響により同6.1%減と3カ月ぶりに減少した。中国も新型コロナウイルス感染拡大による稼働調整の他、部品供給不足もあり、同11.3%減と5カ月連続のマイナスとなった。中国以外のアジアは、国によってまちまちの状況。前年のコロナ禍や部品不足に対する反動増により、タイ、フィリピン、台湾、インドは増加したが、インドネシアやマレーシア、ベトナムなどはマイナスとなり、アジアトータルでは同2.5%減と2カ月ぶりに減少した。欧州も部品供給の影響を受け、同9.5%減と2カ月連続のマイナスだった。
なお、長らく半導体不足の影響が続いているトヨタだが、ようやく回復に向けた明るい兆しが見え始めている。宮崎洋一副社長は、足元の半導体供給の状況について「代替生産できるよう設計変更するなどの対策により、半導体のマネジメント力が改善している」と説明する。その結果、2023年度の世界生産は、初の大台突破となる1010万台を計画。コロナ禍以降の本格回復となるのか、注目を集めている。
ダイハツ工業
グループのダイハツも好調だ。2022年度のグローバル生産は、前年度比13.8%増の173万799台と2年連続で前年実績を上回り、年度として過去最高を更新した。けん引したのが海外生産で、同26.9%増の85万8981台と2年連続のプラスで、年度の過去最高を記録。8社の中でも最も高い伸び率だった。新型車効果や部品供給不足の改善などによりインドネシアが同14.1%増と過去最高を更新。マレーシアも前年のロックダウンの反動増や政府の減免税政策よる需要拡大などで、同58.2%増と高い伸びを見せた。
国内生産は、前年度比3.3%増の87万1818台と3年ぶりに増加した。軽自動車は「タント」の販売好調などにより同15.0%増だったが、登録車が同18.4%減と振るわなかった。前年が、部品調達難による大規模な生産停止や、オミクロン株の感染拡大による稼働停止を実施したため、反動増でプラスを確保した。
足元も好調が続いている。3月単月の世界生産は、前年同月比10.9%増の17万156台と10カ月連続で増加するとともに、単月の世界生産として全ての月を通じて過去最高を更新した。このうち海外生産は、同9.9%増の8万1077台と20カ月連続のプラス。3月の海外生産として過去最高だった。インドネシアは前年が高い伸びを示したこともあり同3.0%減と減少したものの、マレーシアが同35.4%増とけん引した。
国内生産も、前年同月比11.8%増の8万9079台と2カ月ぶりにプラスへ転じた。前年3月が半導体不足に加えて、宮城・福島沖地震、さらに小島プレスに対するサイバー攻撃など、部品供給網の混乱で稼働停止に追い込まれ、大幅減だったため。ただ、軽自動車は同29.9%増と伸長したが、登録車は滋賀第2工場の稼働停止や、トヨタ向けOEM(相手先ブランドによる生産)供給する「ルーミー」や「ライズ」の新型車効果が一巡したこともあり、同16.4%減と低迷した。
好調を続けていたダイハツだが、ここにきて事業環境が一変する事態となっている。国内生産ではブレーキ部品に搭載する半導体不足により、5月から稼働停止や生産調整など大幅な減産を余儀なくされている。さらに4月28日には、海外向け車両の側面衝突試験の認証申請で不正行為があったと発表。マレーシアで主力モデル「アジア」の生産を停止した。加えて5月19日には、国内向け「ロッキー/ライズ」のハイブリッド車でも側面衝突試験の認証手続きに関する不正を発表し、生産を停止する事態に発展している。
ホンダ
8社の中で一番厳しい結果となったのがホンダだ。2022年度のグローバル生産は、前年度比7.8%減の382万814台と4年連続で前年実績を下回った。世界生産の8割以上を占める海外生産が低迷し、同9.5%減の317万7476台と5年連続のマイナスだった。深刻な半導体不足に加えて、ホンダは中国の割合が高く、上海のロックダウンやゼロコロナ政策の影響が大きく表れた。
その結果、中国生産は同19.3%減と2年連続で減少し、中国に工場を構える5社で最大の落ち幅となった。東南アジアは回復したものの、中国の低迷をカバーできず、アジアトータルでも同11.6%減と2年連続のマイナスとなった。中国と並ぶ主力市場の北米は、高価格帯のモデルを中心に他地域より半導体の使用点数が多いこともあり同1.7%減と6年連続で前年実績を下回り、北米に工場を構える5社で唯一の前年割れだった。
国内生産は、前年度比1.4%増の64万3338台と4年ぶりにプラスへ転じた。前年度に比べて半導体不足の影響が緩和しプラスを確保したが、コロナ禍前の19年度との比較では2割減という低水準であり、依然として半導体が足りていない様子が伺える。とはいえ、国内市場の需要動向を踏まえて部品調達を進めており、国内最量販車種の「N-BOX」は減産影響を受けながらも、2022年度の国内販売ランキングで2年連続の首位を守った。N-BOXなど軽自動車は比較的短期間での納車も可能ながら、「ステップワゴン」や「ヴェゼル」は1年程度、新型車の「ZR-V」は1年以上、「シビック」に至っては受注を停止するなど、半導体不足が登録車販売の足かせになっている。
3月単月の世界生産は、前年同月比8.4%増の42万1759台と5カ月ぶりにプラスへ転じた。このうち海外生産は、同10.0%増の34万9000台と5カ月ぶりに増加。北米は前年のサプライチェーン混乱の反動増などもあり、同19.9%増と大きく伸長し、3カ月連続のプラス。中国は前年3月が低水準だったこともあり同2.5%増と7カ月ぶりのプラス。その結果、アジアトータルも同4.3%増と7カ月ぶりに増加した。
国内生産は、前年同月比1.4%増の7万2759台と2カ月連続で増加した。ただ、伸び率は8社で最も低い。これは半導体不足により寄居工場の稼働率を当初計画の9割に下げたことが要因だ。なお、半導体不足の影響について青山真二副社長は「今期は下期にかけて供給が回復していくが、完全な正常化は2024年度以降になるだろう」と見通しを示しており、生産の本格回復にはしばらく時間を要しそうだ。
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