激変する製造業、今こそ「スキルマネジメント」で組織力向上を!:ゼロから学ぶ! 製造業のスキルマネジメント(1)(1/3 ページ)
昨今、製造業を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。この中で、力量管理で扱う人材情報に注目し、戦略的な人材育成/配置や組織力強化への活用を目指す企業が増えてきました。こうした組織的なデータ活用による発展的な力量管理を、本連載では「スキルマネジメント」と呼び、その考え方や取り組み方を解説していきます。
従来、製造業の多くの企業では、「力量管理」あるいは「スキル管理」などの名称で従業員のスキル(技能)や知識、資格、教育履歴を管理してきました。その大半はISOなどの認証取得を目的とするものです。製造業にお勤めの皆さまの中には、この膨大で煩雑な力量管理に悩まされている方もいるでしょう。あるいは、これから本格的に力量管理を始めようとしている方もいるかもしれません。
昨今、製造業を取り巻く環境が大きく変わりつつあり、市場競争も激しくなっています。この中で、力量管理で扱う人材情報を有用なデータと捉え、戦略的な人材育成/配置や組織力強化に役立てようとする企業が増えてきています。
本連載では組織的なデータ活用を前提とした力量管理の発展形を「スキルマネジメント」と呼び、その考え方や取り組み方を解説します。
第1回では従来型の力量管理の手法を概観した上で、外部環境の変化の中でまさに今求められているスキルマネジメントについて説明します。
監査のためにスキルマップは更新するが……
多くの製造業は、自社の製品/サービス品質を継続的に維持/向上するため、品質マネジメントシステムに関する国際規格「ISO9001」を取得しています。ISO9001の認証は第三者の審査機関が行いますが、要求事項の1つに力量管理があります。
ISOにおける「力量」は「意図した結果を達成するために技能や知識を適用する能力」のことを指しており、スキルと近しい意味として扱われています。
ISO9001では力量管理の要求事項として、組織が「製品品質に影響がある仕事に従事する人の力量を把握し、必要な教育・訓練を実施すること」を挙げています。つまりISO9001に十分対応できていれば、ある意味で組織的なスキル管理が仕組み化できている企業だと言えます。
ISO9001の力量管理はスキルマップを用いた運用が一般的です。スキルマップは縦軸に力量、横軸に従業員をとる形式で、各人の力量をレベル別に評価/可視化するものです。スキルマップに定型はなく、多くの企業が独自に作成、運用しています。しかし、実はここに落とし穴があります。
- 「ISO監査のために」スキルマップは更新するが、普段はほぼ更新/参照しない
- 部門毎に個別で定義/運用しており、組織横断的な活用に至っていない
- スキルの定義が何年も見直しされていない
これらは力量管理が形骸化してしまっている事例だと言えます。
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