高湿度下で水素の流量と濃度を測れ、燃料電池の開発を加速する新たな計測装置:研究開発の最前線(1/2 ページ)
パナソニック エレクトリックワークス(EW)社は高湿度下の水素流量と濃度を同時に測れる「超音波式水素流量濃度計」を発売した。
パナソニック エレクトリックワークス(EW)社は2023年2月10日、東京都内で会見を開き、高湿度下の水素流量と濃度を同時に測れる「超音波式水素流量濃度計(GB-L1CMH1A)」の受注を同日に開始したことを発表した。メインターゲットは、燃料電池のメーカーやシステムメーカー、スタックメーカーで燃料電池の評価を行う研究開発部門で、初年度の販売数量目標として数台を掲げ、価格は500万円台で提案しているという。
流量、濃度、温度、圧力、湿度を1台でリアルタイムにモニタリング可能
超音波式水素流量濃度計は、燃料電池の動作時と同じ状態で、高湿度下における水素の流量と濃度を同時に測れるため、燃料電池の開発期間短縮や高耐久化技術の検証に役立つ。
パナソニック EW社 スマートエネルギーシステム事業部の三好麻子氏は、「当事業部が、ガスメーター向けデバイスの開発で培った超音波計測と流体制御の技術などを活用した超音波式水素流量濃度計は、
高湿度環境下の水素流量と濃度の同時計測を実現した。これまで、高温高湿となった燃料電池の循環部における水素の流量と濃度を直接測定する手段はなく、水素の量や発電量、温度、圧力などのデータを基に水素の流量と濃度を推定し、新たな水素の供給と排水/排気のタイミングを制御していた。あるいは、循環部の水分を除去する機構を燃料電池に備えることで水素の流量と濃度を測定していたが、水分を除去する過程で温度や圧力などが変わるため、燃料電池の動作状態と同じ環境で測れなかった」と語った。
本体にセンサーを内蔵しているため、水素の流量と濃度だけでなく、温度、圧力、湿度を1台でリアルタイムにモニタリングすることが可能だ。デジタル出力とアナログ電圧出力でデータを得られるため、顧客が保有する設備と組み合わせて使える他、0.01秒間隔での測定に対応し、水素の流量と濃度の早い変化も見える化できる。「燃料電池内の温度、圧力、湿度は、発電効率と耐久性に大きな影響を与える。燃料電池の発電効率と耐久性の向上には、燃料電池の内部状態をリアルタイムに把握し、最適制御することが重要だ」(三好氏)。
また、毎分2000l(リットル)までの大流量計測に応じ、低流量域の高精度計測にも対応している。濃度の計測についても0〜100vol%(体積パーセント)の広範囲測定が行える。これにより、使用条件に応じて複数の計測機器を用意する必要がなく、スムーズに燃料電池を評価できる。「燃料電池をはじめとする水素エネルギー関連の技術開発では、用途によって水素の流量と濃度が大きく異なるため、それぞれ最適な計測器が必要だったが、今回の製品では1台であらゆる流量と濃度の範囲に応じた測定が行える」(三好氏)。
富士経済の調査によれば、2035年の燃料電池システムの世界市場規模は2020年比で46.7倍の12兆5813億円まで拡大する見通し。パナソニック EW社はこの市場拡大に合わせて、超音波式水素流量温度計の量産と多用途(水素製造装置や水素燃焼機器など)での展開を進め、2030年までに同社が運営する水素流量濃度計事業の規模を20億円まで伸ばしたい考えだ。
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