GHG排出削減に必須の「サステナブルプランニング」とは何か?:「サステナブルプランニング」の方法論(1)(2/4 ページ)
本連載では、企業にとっての新たな命題となった環境経営、すなわちGHG削減に不可欠なGHG排出量計画「サステナブルプランニング」の要点について述べる。第1回はサステナブルプランニングが求められる背景と基本的な紹介を行う。
SCMの新機軸:サステナブルプランニング
そこで必要になるのが「サステナブルプランニング」だ。販売/生産計画に対し、製品あたりのGHG排出原単位を乗じることで、将来の排出量を年次(ないし月次〜四半期次)でシミュレーションする。これによって長期GHG削減目標や年次目標とのギャップ把握とその対策を講じ、これらを上位計画にフィードバックすることで企業のGHG排出量目標を達成していくのである。
この新しい業務機能を具体的に述べるに先立ち、前提としてGHG排出量削減管理が対象とするものを見ていく。これは、GHGプロトコルで定義されている以下の観点で、管理対象(Scope)を分類することが一般的となっている。
- Scope1:事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセスなど)
- Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
- Scope3:Scope1,2以外の自社以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
これらのScopeについては排出量の開示先や利用目的によって、大きく2つの考え方、見方が存在する。
(1)サプライチェーン全体排出量の市場や社会への開示
- 自社+サプライチェーン上流/下流全体(Scope3全て)が対象【Cradle to Grave】
- 網羅性重視(業界平均などの外部情報の活用)
- 本社部門、消費者による製品の使用/廃棄の排出量も対象
(2)製品別排出量把握による自社削減アクション・顧客企業への開示
- 自社+サプライチェーン上流(Scope3の一部まで)が対象【Cradle to Gate】
- 実績や積み上げによる精度重視
- 調達、製造、販売のバリューチェーンに関するプロセスのみを対象
この中でも(2)の“製品別排出量”は、自社のアクションで直接的に削減効果が得られ、今や顧客企業からの選定基準ともなっている製品別排出量の開示要求にも応えられるため、すでに先進的な企業では情報整備の取り組みが進んでいる。
一般的に企業で掲げるGHG削減の目標は1.5℃シナリオ(2050年排出量ネットゼロ)に沿ったものが多く、必然的に2030年や2040年を1つの区切りとした長期目標を計画することが多い。(例:排出量40%削減や全工場再エネ調達に100%切り替えなど)。そして長期であるがゆえ、細部を積み上げた精緻なものではなく、トップダウンでの目標であるケースも多いと思われる。
また、その長期目標にむけての削減工程を各年度計画(GHG予算)に落とし込んでいくことが望ましい。これは事業運営における中期計画、年度予算と同じ関係で捉えると比較的分かりやすい。
そして製品1個当たりの排出量と販売/生産計画を掛け合わせることによって、企業活動計画の裏付けをもった排出量の見通しを可視化し、長期排出量目標に向けて足元計画と上位計画の整合をとっていくPDCAサイクルの運営までが、サステナブルプランニングの業務範囲といえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.