F-35戦闘機も採用する「LynxOS」はRTOSを超えたRTOSを目指す:リアルタイムOS列伝(30)(2/3 ページ)
IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第30回は、軍用や航空宇宙向けを中心に一定のシェアを確保しているRTOS「LynxOS」を紹介する。
買収した組み込みLinuxが終息、「LynxOS」が軍事/航空宇宙向けで伸びる
話を元に戻そう。ISDCorpの買収のタイミングに合わせて当時のLynx Real-Time Systemsは社名をLynuxWorksに変更する。2000年当時は、もともと開発していたLynxOSに加え、ISDCorp由来のRoyal Linuxと、さらにオープンソースディストリビューションとなるやはり組み込み向けの「BlueCat Linux」を提供していた(図2)。これらのうち最初に製品リストから外れたのがRoyal Linuxで、これはBlueCat Linuxで代替される形になったもようだ。
そのBlueCat Linuxは2010年ごろまで提供が続いていたが、2011年には製品ページから名前が消えている(サポートそのものはその後も続いたもよう)。ではその間LynuxWorksは何をやっていたか? というと、もちろんBlueCat Linuxの機能強化やアップデートなどを行っていたが、やはりLynxOSの強化がメインであった。
LynxOSに加え、2003年には航空機のアビオニクス向けの規格であるDO-178Bに対応した「LynxOS-178」を発表。2007年には機能安全の対応を行った「LynxOS-SE」や、仮想化に対応した「LynxSecure Separation Kernel」をリリースしている。このLynxSecure Separation Kernelは、翌年の2008年には「LynxSecure Embedded Hypervisor」と改称されている。もちろんこうした製品の追加に加えてLynxOSそのもののバージョンアップも継続して行われており、この原稿執筆時点では2020年2月にリリースされたV7.1が最新版となっている。
ちなみにLynuxWorksは2019年に、Lynx MOSA.icと呼ばれるモジュラー開発環境の提供を開始しており、例えば軍事向けや航空機のアビオニクス向けなど、特定用途向けのアプリケーションをLynxOS上で容易に構築するためのツールの提供も開始している。このLynx MOSA.icを利用した一番有名な採用事例が、航空自衛隊も導入したロッキード マーティン(Lockheed Martin)のF-35戦闘機(図3)のアビオニクスの開発である(システム全体なのか一部なのかなどは未公表だが)。
なお、LynuxWorksは2014年にLynx Software Technologiesに改称したわけだが、2022年にOceanSound Partnerというファンドの傘下に入っている。もっとも、それ以前も株式上場を行っていたわけではなくプライベートカンパニーだったので、その意味では単に親会社というかオーナーが変わっただけで、業務そのものには変化はないようだ。
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