定番タイマーIC「NE555」のはなし:注目デバイスで組み込み開発をアップグレード(8)(2/2 ページ)
注目デバイスの活用で組み込み開発の幅を広げることが狙いの本連載。第8回は、定番タイマーICである「NE555」について紹介する。
内部回路
図2はNE555の内部回路を示したものです。NE555の構成要素はコンパレータ、フリップフロップ、インバーター、トランジスタ、抵抗です。まずは個々の構成要素についてお話します。
コンパレータ
NE555にはコンパレータ(COMPARATOR)が2個内蔵されています。回路図ではニ等辺三角形で表します。底辺にはプラス(+)とマイナス(ー)の2入力があります。また三角形の頂点からは出力が1本出ています。コンパレータは日本語で言うと比較器です。プラス入力の電圧がマイナス入力を上回ると出力は1となります。また、プラス入力の電圧がマイナス入力を下回ると0を出力します。それでは2つの入力が等しい場合はどうなるでしょう。アナログの世界では2つの電圧の値が完全に等しい状態は存在しません。ですからコンパレータの出力は必ず0か1となります。
フリップフロップ
フリップフロップは2つのNOR論理回路がたすき掛けになった構成です。NOR論理回路はOR(論理和)を否定したロジックです。表1はNORの真理値表です。全ての入力が0の時のみ出力が1となります。入力に一つでも1があると出力は0となります。
入力1 | 入力2 | 出力 |
---|---|---|
0 | 0 | 1 |
0 | 1 | 0 |
1 | 0 | 0 |
1 | 1 | 0 |
表1 NORの真理値表 |
NE555のフリップフロップでは図2の上側にあるNORが3入力になっていますが、話を簡単にするために両方のNORとも2入力として考えてみましょう。図3はフリップフロップを説明するものです。
NOR1の入力1のリセットが0の状態でNOR2の入力2に1が入力されると出力は1となります。そしてNOR2の入力2を0に戻しても出力は1を保持します。NOR1の入力1のリセットを1にすると出力は0に戻ります。リセットが1の状態ではNOR2の入力2を1にしても出力は1になりません。このように、フリップフロップは状態を保持できるので順序回路の基本要素として用いられます。
インバーター
インバーターは反転回路です。NE555ではリセット回路で1つ、出力で2つ使われています。三角印の底辺から入力が1本、三角形の頂点から出力が1本でています。ロジック回路の出力に白丸が付くと反転を意味します。入力が0のとき出力は1となります。入力が1だと出力は0となります。
トランジスタ
CMOS版では電界効果トランジスタ(FET)が使われています。まずはCMOS版を前提に話すと、NE555の出力の1つ手前にあるインバーターに接続されているのがこのトランジスタのゲートと呼ばれる端子です。ソースはGND(グランド)に接続されています。ドレインはNE555の7番ピン(DISCHARGE)にピンアウトされています。NE555では、外付けのコンデンサーを接続します。ゲートが1になるとドレインからソースが導通します。これにより接続されたコンデンサーが放電し電位が下がります。バイポーラ版の説明は割愛しますが、ゲートがベースでドレインがコレクタ、そしてソースがエミッタとして読み替えてください。言い忘れたかもしれませんがCMOSのドランジスタはN-MOS、バイポーラの場合はNPNタイプの素子となります。
抵抗
図2の内部回路ではRと表記されています。3本の抵抗は直列に接続されており、一端はプラス電源にもう一端はGNDに接続されています。プラス電源側から1個目の抵抗と2個目の抵抗の間はコンパレータAのマイナス入力に接続されており、2個目の抵抗と3個目の抵抗の間はコンパレータBのプラス入力に接続されています。これにより、仮に電源電圧が9Vとすると、コンパレータAのマイナス入力には常に6Vが印加されています。またコンパレータBのプラス入力には常に3Vが印加されていることになります。
おわりに
記憶をたどりながら文字にしてきましたが、今回はこれでおしまいです。3本の抵抗の役割が絶妙だという話をしましたが、今回はあまり詳しく語れませんでした。そのあたりも含めまたNE555について語る機会に恵まれれば幸いです。
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