最大限の効果を発揮する「設備投資計画」の立て方:生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり(7)(2/4 ページ)
工場の自動化が進む中でより重要性を増している「設備管理」について解説する本連載。第7回は、「設備投資計画」をテーマに、設備投資計画の特徴、設備投資の種類、設備投資の分析法、設備投資案のランク付けなどについて説明する。
1.4 設備計画に先立ち、徹底した分析と評価を行う
「生まれの良い設備」を生み出すためには、徹底したIE(Industrial Engineering)分析を行って、その「環境整備」を行わなければなりません。
(1)改善対象と改善手段
改善計画の推進に当たっては、原価構成項目である直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費、一般費について分析し現状を認識するとともに、総合的な改善を実施することが効果を高める必須条件です。
原価構成項目に対応した改善対象範囲を理解して、設備を作る前に現状システムの複雑化を避けて単純化を図るための改善を実施することが、設備自体の生まれを良くすることにつながっていくわけです。
よく見掛ける事例として、設備が完成した時点までの間に手作業の作業改善が進み、設備の効果が半減してしまったとか、製品品質に無害な油がみつかり、せっかく作った洗浄設備が不要になってしまったとかのないよう、十分に作業環境の改善を行って強い設備を作る必要があります。
(2)分析項目と評価項目
原価構成区分を理解し、改善手段を適切に選択し効果をあげるためには、コストを発生させている経営資源に対応した適切な分析が必要となります。個々の経営資源に対応するムダの認識と改善に対する問題提起は、いかに有効な分析を行い、それをいかに定量的に評価するかにあるといっても過言ではありません。
経営資源には、人に関すること、設備に関すること、モノに関すること、品質に関すること、職場配置に関すること、生産管理に関することなどがあります。以下は、設備に関することに対応した分析と評価項目の一例ではありますが、目的に応じて最適な方法を開発または選択することが「生まれの良い設備」を製作する第一歩です。
- <分析項目>
- 設備稼働分析(段取や準備など)
- MTBF(平均故障間隔:Mean Time Between Failure)分析
- 理論/実能力分析
- 合理化レベル分析
- PM時間分析
- <評価項目>
- 設備パープロ=生産量÷機械設備の総稼働時間(量/時)
- MTBF
- 設備稼働率
- 自動化率
(3)設備導入の検討
新規に生産用の設備の導入や改造に対して行う設備導入の実施要領について少し触れておきたいと思います。
「設備導入の検討」とは、新規設備の導入や改造時に、機能、性能、信頼性、経済性、安全性、操作性、保全性などの要求諸条件に対し、その適合性を確認するために、組織的に種々の問題点を事前に除去することを目的に行う検討会などのことをいいます。設備製作の仕様担当部門は、その検討結果を「生産設備導入検討会報告書」にまとめ、関連部門に配布します。
設備を新規導入する場合、導入検討を省略してしまうケースを多く見受けられますが、これを怠ると生産設備の妥当性や信頼性などの諸条件に対する適合性を十分に検討することなく計画を推進し、後でトラブルが発生するという状況が生まれてしまいます。設備の導入検討の実施要領を表1に示しておきましたので、導入時に発生する種々の問題点を事前に除去するために、システマチックに検討を行うことをお薦めします。
区分 | 実施時期 | 関係部門 | 検討事項 | 成果物 |
---|---|---|---|---|
構想検討 | 計画時 | 仕様担当 生産技術 製品設計 品質保証 製造担当 環境管理 有識者 |
生産設備が満足しなければならない製品の要求仕様、品質目標とその実現手段とその対象範囲の検討 | 提案書 検討結果報告書 |
中間検討 | 発注時 | 設計仕様の要求項目と操作性、安全性の検討。また、作業時の使い勝手や前後工程との関係を検討する | 設備導入検討報告書 | |
最終検討 | 稼働前 | 量産に適用するための最終検討を生産設備そのものを使って行う | ||
表1 設備導入の検討区分と検討事項 |
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