解析専任者に連絡する前に、設計者がやるべきこと:CAEと計測技術を使った振動・騒音対策(1)(2/3 ページ)
連載「CAEと計測技術を使った振動・騒音対策」では、“解析専任者に連絡する前に、設計者がやるべきこと”を主眼に、CAEと計測技術を用いた機械の振動対策と騒音対策の考え方や、その手順について詳しく解説する。連載第1回では、本連載の趣旨、振動対策や騒音対策が必要となる場面などについて取り上げる。
振動対策が必要となる場面(1)
振動対策のためのCAEとしては、「モーダル解析」が多いでしょう。図3に、板に載ったモーターのモーダル解析の例を示します。1次の固有振動数が195[Hz]となりました。195[Hz]の正弦波状の外力を加えると共振状態となり、図3左図のような形で変形すると予測されます。
この結果がどのような場面で使われるかというと「設計審査」、つまり「デザインレビュー」で使われることが多いように思います。担当者の方は、デザインレビューの際に「モーター回転数は3000[rpm](式1)なので、加振周波数は50[Hz](式2)となる。この周波数は、1次の固有振動数195[Hz]と懸け離れているため、共振問題の可能性はない」と説明するのでしょうか。
しかし、筆者としては、このようなモーダル解析は「消極的な使い方」だと考えます。1次の固有振動数が195[Hz]と分かっただけで、機械の性能が向上したわけでもなければ、過剰設計が見つかってコストダウンにつながったわけでもないのです。得られるものが少ないように思います。
振動対策が必要となる場面(2)
もう1つ、振動対策が必要となる場面を紹介します(参考文献[2])。液晶表示パネルを構成する2枚のガラス板(液晶基板)の間には液晶材料(液体)が入っています。2枚の液晶基板を接着してパネルにするため、接着剤(シール材)を線引き塗布します。
このとき用いられる、液晶パネル製造用シール塗布装置を図4に示します。XYステージに液晶基板を載せてディスペンサノズルからシール材を吐出しながら、液晶基板にシール材を線引き塗布します。液晶表示パネルは四角形なので角は直角です。ということは角の所にシール材を塗布するときに、XYステージのX軸は急ブレーキをかけ、Y軸は急発進する必要があります。
この急ブレーキと急発進時の加速度が常軌を逸する値の場合、装置が振動してしまい、塗布されたシール材は図5左図のようになってしまいます。図5左図のような状態から図5右図のようにするためには、計測技術とCAEを使います。先に振動を測定して装置の挙動を把握し、そして、CAEで解析して対策を立案する方法がとられます。このように、振動解析を積極的に使用する場面も多いと思います。
参考文献
- [2]高橋、原田、豊島/液晶シール塗布技術/Vol.53、No.1(1998)
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